愛犬の寿命を延ばす5つの習慣|研究でわかった体重・食事・絆の効果

私は数年前まで、犬がほんとうに苦手でした。子どものころに近所で大型犬に追いかけ回された記憶が残っていて、道で犬とすれ違うだけで体がこわばり、知らないうちに後ずさっていました。
そんな私が、いまは毎晩、寝室でうちの茶々丸(キャバプー・9kg)のお腹に手を当てて、「五十年生きてね」とつぶやいています。五十年は無理です。それでも、毎晩そう祈っています。
気持ちだけではどうにもならないので、調べました。愛犬の寿命は、飼い主の日々の習慣で変わります。 生涯にわたってラブラドール48頭を追跡した研究(Kealy et al., 2002, JAVMA)では、やせ型を保った犬の生存期間の中央値が13.0年で、好きなだけ食べさせて太り気味になった犬の11.2年を1.8年上回りました。
茶々丸は、私の人生で初めて迎えた犬です。だからなのか、一緒に過ごす一日一日が貴重に感じられます。この記事には、海外の獣医学研究を読んで分かったことと、わが家で実際にやっていることを書きました。
この記事は一般的な情報提供を目的としており、獣医師の診断に代わるものではありません。 愛犬の健康に不安がある場合は、かかりつけの獣医師にご相談ください。
50年は無理でも——犬の寿命はどこまで延ばせるのか?
まず、現実の数字から見ていきます。
ペットフード協会の2024年「全国犬猫飼育実態調査」によると、日本の犬の平均寿命は14.90歳です。体格別では超小型15.13歳、小型14.78歳、中・大型14.37歳。昔よりずいぶん延びています。獣医療の進歩と、飼い主の意識の変化が背景にあるのだと思います。
ただ、これはあくまで全犬種をならした数字です。実際には、犬種や体格で何年もの差が出ます。
2024年に Nature の Scientific Reports に掲載された大規模研究(McMillan et al.)は、イギリスの58万4千頭余の犬のデータから、犬種ごとの寿命を出していました。それによると——
補足資料には、体格3種×頭部形状3種の9通りすべての中央値が載っています。短いほうから並べると、こうです。
| 体格 | 頭部形状 | 寿命の中央値 | 頭数 |
|---|---|---|---|
| 中型 | 短頭 | 9.4年 | 9,709 |
| 大型 | 短頭 | 10.7年 | 17,671 |
| 大型 | 長頭 | 11.1年 | 28,114 |
| 小型 | 短頭 | 11.8年 | 60,723 |
| 中型 | 長頭 | 12.3年 | 13,072 |
| 大型 | 中頭 | 12.5年 | 76,699 |
| 小型 | 中頭 | 12.8年 | 141,024 |
| 中型 | 中頭 | 12.9年 | 50,030 |
| 小型 | 長頭 | 13.3年 | 19,605 |
読み取れることは2つです。ひとつは、短頭種が3つの体格すべてで最下位に来ること。中型で比べると、中頭種の12.9年に対して短頭種は9.4年で、3年半の差がつきます。
もうひとつは、よく言われる「鼻が長いほど長生き」のほうは、単純には成り立たないことです。小型では長頭が最長ですが、中型と大型では中頭が長頭を上回っています。長いほど良いのではなく、短いと不利、というのが正確なところです。
なお、この体格・頭部形状の集計は純血種だけを対象にしています。交雑種は体格や頭の形のばらつきが大きく分類できないため、論文でも除かれています。区分自体も日本の一般的な感覚とはずれるので、自分の犬種を確かめたい場合は補足資料の犬種別一覧を見るのが確実です。
私が驚いたのは、別のところです。「雑種は純血種より長生きするはずだ」というのが、なんとなく世間の常識のようになっていますが、この論文では、純血種の中央値が12.7年、交雑種が12.0年。むしろわずかに、純血種のほうが長いという結果でした。犬種ごとに見ると、交雑種より寿命の中央値が長かった純血種の犬種が47.1%、短かったのが25.8%、有意差がなかったのが27.1%。論文の記述を訳すと、こうです。「過去の研究は、純血種のほうが交雑種より寿命が有意に短いと報告してきた。それが、交雑種は純血種よりずっと健康だ、という広く行き渡った信念につながっている」(筆者訳)。つまるところ雑種と純血種の寿命差については、研究によって結論が割れている、というのが現状のようです。
茶々丸はキャバリアとトイ・プードルの混血です。キャバリアは心臓の病気が多い犬種として知られています。ただし混血の場合にどちらの血筋がどう出るのかは、犬種ごとの寿命データからは読み取れません。この研究も、交雑種はひとまとめの一群として扱っています。
でも、犬種は配られたカードです。ここから先は、飼い主の手の中の話になります。配られたカードでどこまで戦えるか、ということだと思います。
仮に交雑種の中央値である十二年として、ある日、茶々丸の残り時間をスマホの電卓で計算してみたことがあります。私が何歳のとき、茶々丸はこの世界からいなくなるのか——出てきた数字は、思っていたよりずっと手前にありました。この一日が、たぶんその数字をひとつ書き換えます。
体重管理が"最強の長寿習慣"と言われる理由は?
犬の寿命研究のなかでいちばん有名なデータを出しているのが、Purinaが14年間にわたって行った追跡研究(Kealy et al., 2002, JAVMA 掲載)です。
ラブラドール・レトリバー48頭を、兄弟どうしでペアにして二群に分けました。ここを誤解している解説をよく見かけるのですが、対照群は「通常量」を食べていたわけではありません。1日15分のあいだ、好きなだけ食べさせる方式です。もう一方の群には、ペアの相手が食べた量の75%を与えました。ただし自由に食べさせたのは3.25歳までで、それ以降は対照群にも肥満を防ぐために理想体重に基づく定量給餌が行われています。
結果として、二群の体型はこう分かれました。対照群の体型スコア(BCS)は9段階の6〜7で、これは「太り気味」にあたります。制限群は4〜5で、こちらが理想域です。
| グループ | 体型(BCS) | 生存期間の中央値 | 慢性疾患で初めて治療が必要になった年齢(中央値) |
|---|---|---|---|
| 好きなだけ食べる | 6〜7(太り気味) | 11.2年 | 9.9歳 |
| ペアの75%(やせ型維持) | 4〜5(理想) | 13.0年 | 12.0歳 |
差は1.8年です。そして、慢性疾患で最初に治療が必要になる時期が2年遅れています。
同じ犬たちを追った別の報告(Smith et al., 2006)では、8歳の時点でレントゲン上の股関節の変形性関節症が見られた犬が、好きなだけ食べた群で22頭中14頭(64%)、制限群では21頭中3頭(14%)でした。
ここで大事なのは、この研究が比べたのが、やせ型と太り気味だったということです。「標準的な量から25%減らせ」という話ではありません。目標は減らす量ではなく、理想の体型を生涯にわたって保つことのほうです。
日本の室内犬にとって、肥満リスクはすぐ隣にあります。散歩以外の運動機会が乏しく、おやつ文化が根づいていて、「ぽっちゃりがかわいい」という空気もあります。
仕事の合間に茶々丸が寄ってきて、足元からつぶらな目でじっと私を見上げると、私は「もうひとつだけ」とおやつを差し出してしまいます。家で仕事をしていると、いちいち目が合います。
ここで厄介なのは、飼い主の目があてにならないことです。
英国の3つの動物病院で110頭を対象にした調査(Eastland-Jones et al., 2014)では、57%の飼い主が自分の犬の体型を実際より痩せているほうに誤認していました。しかも、BCSのチャートを見せて判定し直してもらっても、誤認は60%で、まったく減りませんでした。論文の結論はこうです。「5段階のBCSチャートを使っても、飼い主が自分の犬の体型を認識する正確さは改善しない。改善したという感覚だけは伴うにもかかわらず」(筆者訳)。
体重が少しずつ増えていくと、飼い主の側の基準も一緒にずれていきます。だから自分の目だけでは、ずれたことに気づけません。
そこでわが家では、自分の判定を他人の目にかけることにしています。触ってみて、見た目で太ってきたと感じたら、おやつを控える。そのうえで、動物病院に行ったときに先生に聞く。トリミングに出したときに、トリマーさんに「太りましたか?」と聞く。毎日見ている人間より、たまに会う人のほうが、変化にはよく気づきます。
体重計は、人間用のものが家にあって、そこに時々乗せる程度です。数字があるに越したことはないのですが、時々では、増えていく途中を拾えません。
ひとりの感覚を、複数の他人の目で校正する。地味ですが、いまのところこれがいちばん確実だと思っています。
自宅でできる目安として、BCS(ボディコンディションスコア)という指標があります。かかりつけの獣医さんに教わった簡易チェックを、メモしておきます。
- 肋骨を指で軽く触ったとき、脂肪越しにうっすら感じられるのが理想(触れないほど厚い脂肪があれば肥満傾向)
- 真上から見て、腰にくびれがあるか
- 横から見て、お腹が地面と平行ではなく少し引き締まっているか
三つとも「問題なし」なら適正体重です。ひとつでも気になったら、フードの量を見直す合図ということになります。
食器を毎日洗うのは本当に意味がある?
これは、私が長く気にしていたことです。
茶々丸のフードボウルは、洗剤を使わずに洗っています。
これには理由があります。最初の頃に試したら、洗剤の匂いを茶々丸がわずかに嫌がりました。人間にはほのかな残り香でも、犬にはもっとはっきり届いているのだろうと考えました。それで、私はある日、洗剤を断つことにしました。
代わりに使っているのが、メラミンスポンジ(俗に「激落ちくん」と呼ばれているあれです)と、沸騰したての熱湯です。
水で流したあとメラミンスポンジでボウルを擦ると、洗剤でも落ちにくかったヌメヌメ(バイオフィルムというものらしいです)が、ぽろりと取れます。それから、沸かしたばかりの湯をかけて、少し冷ましてから、ドライフードを入れます。ドライフードだと水分補給も兼ねられるので、茶々丸には食事のタイミングでお湯ごと水分も摂ってもらう、というやり方です。
この方法に根拠があるのかは、あとから調べました。
2022年に PLOS ONE に掲載された Luisana et al. の研究は、飼い主のペットフード衛生についての認知と行動を調べました。FDAが出しているペットフード衛生ガイドラインの存在を知っていた飼い主は5%未満。そして、指導された衛生手順を「すべて」長期的に続けるつもりだと答えた人は、対象となったグループの8%にとどまりました。洗い方の指示だけなら20%です。いずれも守り続けた割合ではなく、続ける意向を答えた割合であることに注意してください。
この研究で示された結果のひとつが、洗浄温度の効果です。冷水・ぬるま湯で洗った場合に比べて、FDAが推奨する方法(食洗機、または熱湯での洗浄)では、一般生菌数が対数スケールで1.5単位低下しました(p値 0.01未満)。
わが家の「メラミンスポンジ+熱湯」方式は、洗剤こそ使っていませんが、方向としてはこの推奨に沿っています。ただし正直に書くと、熱湯までかけられるのは忙しくない日だけです。できない日は、水とメラミンスポンジで済ませています。
ひとつ補足しておくと、この研究は検出された菌が病原性かどうかを区別していません。菌が減ったことと、犬が下痢をしにくくなることは、別の話です。研究が測ったのはあくまで洗い方と菌数の関係で、体調がどうなったかまでは追っていません。
そのうえで、研究から素直に言えるのはこのあたりです。
- 洗う温度を上げる(洗剤+お湯でも、熱湯でも、食洗機でも。冷水・ぬるま湯より菌数が下がる)
- 洗う頻度を上げる(1日1回以上洗っている飼い主は12%しかいない)
わが家がステンレスを使っているのは、メラミンスポンジで擦っても傷がつきにくいからです。ただし素材そのものに効果を期待しないでください。この研究では、衛生プロトコルを始める前の時点で、容器の素材(金属・プラスチック・セラミック)による菌数に有意差は認められていません。
ちなみにこの研究で、食器を1日1回以上洗っていると答えた飼い主は12%でした。裏を返せば、多くの家庭で食器は毎日は洗われていません。わが家も熱湯までは毎日届いていないので、胸を張れる話ではありませんが、「毎日きちんと」ができていないのは、どうやら例外ではないようです。
犬に絶対あげてはいけない食べ物は?
「犬も食べられるんでしょ?」という悪気のない一言から、中毒が起きることがあります。
Frontiers in Veterinary Science に載ったレビュー論文(Cortinovis & Caloni, 2016)は、犬と猫にとって有害な家庭内食品を、網羅的にまとめてくれています。特に危険度が高いものを、表にしました。
| 食品 | 危険成分 | 主な症状 | 補足 |
|---|---|---|---|
| タマネギ・ニンニク・ネギ類 | 有機スルホキシド類 | 溶血性貧血 | 体重1kgあたり15〜30gで血液学的変化 |
| ぶどう・レーズン | 未特定 | 急性腎不全 | 個体差が大きく安全量の特定不能 |
| キシリトール | キシリトールそのもの | 低血糖・肝障害 | 体重1kgあたり0.03gで低血糖のリスク |
| チョコレート | テオブロミン | 嘔吐・不整脈・痙攣 | 無糖ベーキングチョコとココアパウダーが最も高濃度(1gあたり14mg超) |
| マカダミアナッツ | 未特定 | 嘔吐・運動失調・後肢虚弱 | 体重1kgあたり0.7gで発症報告 |
このなかで日本の家庭の食卓で特にややこしいのが、ネギ類です。
タマネギやネギの毒性は、加熱しても消えません。Cortinovis & Caloni のレビューでも、その点ははっきり明記されていました。日本の食卓には味噌汁、カレー、肉じゃが、親子丼と、タマネギ・ネギ族が次々に登場します。「うちは生のタマネギはあげていません」という飼い主でも、味噌汁の残り汁を冷ましてあげていたり、鍋の残り汁をフードにかけていたりすることがあります。何気ない優しさが、犬にとっては毒物の摂取になりかねません。
ぶどうとレーズンも、また難物です。原因物質はいまだに完全には特定されておらず、個体差も極端です。「前に食べて平気だったから」は通用しません。安全量というものが存在しない以上、一粒もあげない、というのが、いちばん安い保険ということになります。
どれくらいの量で危ないのか。ぶどう・レーズンについては、ここが他の食品と決定的に違います。同じ Cortinovis & Caloni のレビューには、体重8.2kgのダックスフントがぶどうを4〜5粒食べて発症した報告が載っている一方で、最大で1kgのレーズンを食べても無症状だった犬がいたことも書かれています。逆に、ひとつかみで死亡した犬もいます。
少ない量でも起きるし、多い量でも起きないことがある。タマネギの15〜30g/kg のように「この量を超えたら危ない」と線を引く方法が、この果物では成立しません。レビュー自身が、これらの果物はどんな量であっても臨床上の問題として扱うべきだと書いています。安全量が「まだ分かっていない」のではなく、「安全量という概念が成り立たない」に近い状態です。
そして、この種の事故が起きるのは、たいてい飼い主が見ていない場所ではありません。家族が悪気なく差し出したり、来客がテーブルの下に落としたり、という日常の延長線上です。だとすると、犬の食中毒対策で本当に効くのは、飼い主が知識を持つことよりも、その知識を同居する人と来客に共有しておくことのほうになります。冷蔵庫に「犬にあげてはいけないもの」を貼っておく。地味ですが、知識を自分の頭の外に置いておく方法としては確実です。
避妊・去勢は寿命に影響するのか?
これはセンシティブな話で、簡単に「したほうがいい」「しないほうがいい」と言えるものではありません。それでも、寿命に直接関わるデータがある以上、触れずにすますのは、不誠実だと思います。
2013年、ジョージア大学の Hoffman et al. が PLOS ONE に発表した研究は、70,574頭の犬の記録を、丹念に分析しています。結果は——
| 区分 | 平均死亡年齢 |
|---|---|
| 未手術 | 7.9歳 |
| 手術済み | 9.4歳 |
性別ごとの内訳については、この論文は平均死亡年齢そのものを分けて出してはいません。示されているのは寿命の延び幅のほうで、この70,574頭の全体コホートで、オスが13.8%、メスが26.3%の延長と報告されています。なぜメスのほうが大きいのかについて、この論文は理由を特定していません。
その一方で、同じ Hoffman et al. の分析では、手術済みの犬は腫瘍性疾患(ガン)や免疫介在性疾患で亡くなる割合が高い、とも報告されています。早期に手術するか、成長を待ってからにするか。犬種、体格、暮らし方によって、最適なタイミングは、ずいぶん変わってきます。
茶々丸は、避妊手術を済ませています。決め手は、望まない妊娠を避けることでした。万が一のことが起きたときに責任を取れない、という状態にはしたくなかった。もっとも、これが飼い主の側の都合であることは自覚しています。茶々丸自身が望んだわけではありません。
それでも、手術の前の夜は眠れませんでした。術後の茶々丸は、目に見えてテンションが下がっていて、いつものように寄ってこず、部屋の隅にいたり、物陰に隠れたりしていました。判断に納得していることと、決めた本人の気分が晴れることは、別でした。
私はそうしました。あなたの愛犬にとって何がいいかは、信頼できる獣医師さんと、いちど、ゆっくり話してみてください。
"犬友"がいる犬は長生きする?社会的つながりと寿命の意外な関係
ここまでの四つは、食事や医療など、身体的な要因の話でした。最後の一つは、すこし毛色のちがう、不思議なデータです。
Dog Aging Project という、犬の加齢に関する世界最大規模の観察研究があります。その一環として、2023年に Oxford の学術誌に発表された論文(McCoy et al.)が、21,410頭のデータを分析して、犬の健康と社会的環境の関係を調べています。
結論は意外でした。犬の健康に対する社会的サポートの影響は、経済的要因の5倍だったといいます。論文の記述をそのまま訳すと、「社会的サポートの効果は、金銭的要因より5倍強かった」(筆者訳)。
この5倍の根拠になっている「社会的サポート」という変数の中身は、犬・子ども・大人と一緒に過ごす1日あたりの時間です。他の犬と一緒に暮らしている犬のほうが、飼い主の報告する健康状態が良い傾向にありました。
ただし注意が必要です。この研究が見ているのは横断的な健康状態・疾患数・可動性であって、寿命ではありません。論文自身も、この解析結果を医療上の判断や介入の根拠に使うべきではないと明記しています。
私は、家で仕事をしている日が多いです。茶々丸が来るまでは、「一日中、誰ともしゃべらない日があるなあ」と思っていました。茶々丸が来てからは、毎日、茶々丸に話しかけています。「朝ごはん食べる?」「散歩行く?」「そこ、噛まないで」。声を出している時間は、明らかに増えました。
おかげで、私自身が少し健康になった気がします。その分、茶々丸にも何か戻っているのだろうと思います。
この論文を読んだ夜、いつもの「五十年生きてね」が、すこしだけ違う意味を持った気がしました。
毎晩、茶々丸のお腹に手を当てて、体温を感じながら「五十年」と口の中でつぶやく数秒間があります。社会的なつながりが犬の健康に効いているのなら、この数秒も無駄ではないのかもしれません。
私は今夜も、茶々丸のお腹に手を当てて、「五十年、生きてね」とつぶやきます。茶々丸は寝ています。
まとめ
五十年は無理です。犬の時間は、人間よりずっと早く進みます。
ここまで五つを見てきましたが、最後に正直なところを書いておきます。このうち「寿命が延びた」という形で数字が出ているのは、体重管理と避妊・去勢の二つだけです。 食器の衛生は菌数が下がることまで、危険な食べ物の回避は中毒を避けることまで、社会的つながりは飼い主が報告する健康状態に良い傾向があるところまでしか確かめられていません。寿命そのものを測った研究ではないのです。
それでも五つを並べたのは、どれも実際に手を動かせることだからです。肋骨を触ってみること。食器をお湯で洗うこと。危ないものを家族と共有しておくこと。獣医さんとちゃんと話すこと。犬友と遊ばせてあげること。特別な道具も高額な費用も要りません。
五つと書きましたが、書ききれなかったものが、まだあります。ひとつは、歯。歯周病は口のなかだけで終わる話ではないそうで、犬の口臭と歯周病 のほうに、歯みがきをどうやって毎日の習慣にするかを、別に書きました。もうひとつは、予防薬です。フィラリアもマダニも、かかってから治すより、かからないようにするほうが、はるかに安く済みます。時期と地域差のことは、春のマダニ強化期間 のほうにまとめてあります。どちらも、地味な話です。地味なものほど、効くのだろうと、私は思っています。
1.8年は、数字としては地味かもしれません。でも、犬と暮らす人間にとっての1.8年は、途方もなく長い時間です。朝の散歩が、六百五十七回分。おかえりの尻尾振りが、六百五十七回分。一緒に過ごす夜が、六百五十七夜分。書き出してみると、急に、たいへんな宝物のように思えてきます。
飼い主の目があてにならないのなら、記録のほうを当てにする手があります。SiPPO Friendsの健康管理機能で体重の推移を残しておくと、「最近、ちょっと太ったかも」という曖昧な感覚を、あとから数字で見直せます。食事や便の記録もまとめて管理できるので、まずは月に一度の計量から始めてみてください。
数年前まで犬が苦手だった私が、今夜もまた茶々丸のお腹に手を当てて、「五十年、生きてね」とつぶやきます。茶々丸はいびきをかいて、聞いてはいません。五十年は無理でも、一日でも長く生きてほしいと願っています。その「一日」を毎日積み重ねていくことが、飼い主にできるいちばん地味で、いちばん確かなことだと思います。
よくある質問
- 犬の寿命は習慣でどのくらい延ばせる?
- Purinaが生涯にわたって追跡した研究(Kealy et al. 2002)では、やせ型(BCS 4〜5)を保った犬の生存期間の中央値が13.0年で、好きなだけ食べさせて太り気味(BCS 6〜7)になった犬の11.2年より1.8年長くなりました。慢性疾患で初めて治療が必要になった年齢も、9.9歳に対して12.0歳と2年遅れています。なおこの研究の対照群は『通常量』を食べていたのではなく、3.25歳までは自由に食べさせ、以降は理想体重に基づく定量給餌に切り替えられています。『フードを25%減らせば長生きする』という意味ではなく、目標は理想体型を保つことです。
- 犬の寿命を延ばす習慣にはどんなものがある?
- 寿命そのものへの効果が示されているのは、体重管理(Kealy et al. 2002)と避妊・去勢(Hoffman et al. 2013)の2つです。食器の衛生(71.1℃以上の湯で菌数が下がる)と危険な食べ物の回避は、寿命ではなくリスクを減らす対策として裏づけがあります。社会的つながり(McCoy et al. 2023)で示されているのは飼い主が報告する健康状態や可動性で、寿命は測定されていません。どれも特別な道具や費用は要りません。
- 避妊・去勢は犬の寿命に影響する?
- 70,574頭の記録を分析した研究(Hoffman et al. 2013)では、手術済みの犬の平均死亡年齢が9.4歳で、未手術の7.9歳を上回りました。性別ごとの平均死亡年齢は示されていませんが、寿命の延び幅はこの全体コホートでオス13.8%、メス26.3%と報告されています。一方で同じ研究では、手術済みの犬は腫瘍性疾患や免疫介在性疾患で亡くなる割合が高いとも報告されており、最適なタイミングは獣医と相談して決めます。
- 犬種によって寿命はどのくらい違う?
- 英国の58万頭超を分析した研究(McMillan et al. 2024)では、純血種を体格3種×頭部形状3種の9群に分けた中央値が示されています。最長は小型・長頭種の13.3年、最短は中型・短頭種の9.4年でした。短頭種はどの体格でも同じ体格の他の頭部形状より短命ですが、「鼻が長いほど長生き」は単純には成り立たず、中型と大型では中頭種が長頭種を上回っています。
出典・参考文献
- Effects of diet restriction on life span and age-related changes in dogs — Journal of the American Veterinary Medical Association (Kealy et al., 2002)
- Diet restriction and ageing in the dog: major observations over two decades — British Journal of Nutrition (Lawler et al., 2008)
- First-Ever Study Proves Diet Restriction Can Add Nearly Two More Years Of Healthy Life for Canines — Purina Life Span Study 公式リリース (Nestlé Purina PetCare)
- Lifelong diet restriction and radiographic evidence of osteoarthritis of the hip joint in dogs — Journal of the American Veterinary Medical Association (Smith et al., 2006)
- Owner misperception of canine body condition persists despite use of a body condition score chart — Journal of Nutritional Science (Eastland-Jones et al., 2014)
- Survey evaluation of dog owners' feeding practices and dog bowls' hygiene assessment in domestic settings — PLOS ONE (Luisana et al., 2022)
- Household Food Items Toxic to Dogs and Cats — Frontiers in Veterinary Science (Cortinovis & Caloni, 2016)
- Longevity of companion dog breeds: those at risk from early death — Scientific Reports (McMillan et al., 2024)
- Social determinants of health and disease in companion dogs: a cohort study from the Dog Aging Project — Evolution, Medicine, and Public Health (McCoy et al., 2023)
- Reproductive Capability Is Associated with Lifespan and Cause of Death in Companion Dogs — PLOS ONE (Hoffman et al., 2013)
- 令和6年(2024年)全国犬猫飼育実態調査 — 犬 飼育・給餌実態と支出 — 一般社団法人ペットフード協会
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SiPPO Friends 編集部
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