犬のうんち完全ガイド|WALTHAM5段階スコアと色で読む健康サイン、散歩中の処理マナー

朝の散歩の帰り道。茶々丸(キャバプー、もうすぐ二歳)が電柱の横で、いつもの体勢を取りました。腰を落として、少し震えながら、ちらっと私の方を振り返る。この「見てね」の顔が毎回たまらなく可愛いんですが、私がそのあとにまずやっているのは、写真ではありません。袋越しに便の硬さを確かめて、色をちらっと見てから拾う、という、犬を飼う前の私が聞いたら「え、毎日?」と絶句するような作業です。
獣医さんに最初に言われた言葉が、ずっと残っていました。「血液検査より先に、毎日うんちを見るのが、一番安いヘルスチェックですよ」。
犬のうんちは、散歩マナーであると同時に、飼い主が毎日タダで受けられる健康診断なんです。 私がそれを実感したのは、開業医でもなく研究者でもなく、ただ茶々丸を二年連れ歩いた末のことですが。国際的な獣医学研究(Cavett et al. 2021)でも、WALTHAM 五段階の便スコアは獣医師間で安定した評価指標として機能することが、確認されています。色・硬さ・回数の三つを、拾うときに目で追うだけで、消化器・肝臓・腎臓の初期サインの多くを拾えるそうです。
この記事では、犬のうんちの正常な回数・形・色の基準と、散歩中の処理マナー(東京都・目黒区の公式ガイド準拠)、袋選びの落とし穴、そして獣医に行くべきサインまで、国際獣医学のデータと茶々丸との日常を交えて、整理します。
この記事は一般的な情報提供を目的としており、獣医師の診断に代わるものではありません。 便の異常が続く、血が混じる、元気食欲が落ちているなど、愛犬の体調に不安がある場合は、かかりつけの獣医師にご相談ください。
犬のうんち、1日何回が正常?
結論から言うと、成犬の便の回数は一日一〜三回が目安で、子犬は一日三〜五回になることも珍しくありません。
PetMD や Cornell 大学獣医学部の解説によれば、便の量と回数は「何をどれだけ食べたか」と「消化管の通過速度」で、おおむね決まります。つまり食事と運動量が安定していれば、回数も自然と一定のリズムに落ち着く、ということです。
1日の回数の目安
| ライフステージ | 食事回数 | 便の回数の目安 |
|---|---|---|
| 子犬(〜6ヶ月) | 1日3〜4回 | 1日3〜5回 |
| 成犬(6ヶ月〜7歳) | 1日2回 | 1日1〜3回 |
| シニア犬(7歳〜) | 1日2回 | 1日1〜2回(便秘傾向) |
茶々丸は成犬期の真ん中で、朝と夕方の二回が基本リズムです。散歩に出た直後の五〜十分以内にほぼ必ず一回、そして夕方の散歩で念のためもう一回、というのが我が家のルーティン。
食べてから出るまでの時間
散歩中の便が「さっき食べたフード」ではない、というのは、ちょっと直感に反します。食後すぐの便意は「胃結腸反射」と呼ばれる現象で、胃に食べ物が入ると大腸が刺激され、食後三十分以内に排便を促します。ただし出てくるのは、いま食べたものではない。一〜二回前に食べたものが、腸を進んで出口に到達している、と考えるとイメージしやすいです。
回数が普段と違うとき
日ごろの回数を把握しておくこと、これがそのまま異常の早期発見につながります。
- 回数が急に増える → 小腸性ではなく大腸性の下痢の可能性(Cornell)
- 1日以上出ていない → 便秘、消化管の動きの低下、ストレス
- 毎回少しずつ何度もいきむ → テネスムス(しぶり)と呼ばれる大腸疾患のサイン
茶々丸の食事を新しいフードに変えた時期、便の回数が急に一日五回まで増えたことがありました。慌てて獣医さんに相談したら、「フード切り替えは一〜二週間かけて徐々にね」と指導を受けたんです。急な変更は胃腸に予想以上の負担がかかる、と。それ以降、新しいフードを試すときは、最初の週は旧フードと一対三、次に一対一、二対三、そして百パーセント、という段階を、丁寧に踏むようにしています。「なぜ一番最初に誰も教えてくれなかったのか」と帰り道に思いましたが、よく見るとフードの箱の隅っこに小さく書いてありました。
理想のうんちはどんな状態?— WALTHAM5段階スコアで見る
獣医学の現場で使われる最もポピュラーな便スコアが、Mars Petcare 傘下の WALTHAM Petcare Science Institute が開発した「WALTHAM Faeces Scoring System」です。一〜五の五段階評価に〇・五刻みを加えた九段階で、便の形と水分量を視覚的に判定します。
Cavett らが二〇二一年に Journal of Small Animal Practice に発表した研究(百二十六頭の犬、三人の獣医師と百二十六人の一般飼い主による評価)では、獣医師間の κ 値(評価一致度)が WALTHAM スケールで〇・五四〜〇・六一、Purina スケールで〇・四〇〜〇・七七。WALTHAM のほうがブレ幅が小さく、スコア刻みが半分ずつきめ細かい分だけ、評価が安定する、と読める結果でした。獣医師と一般飼い主の間では κ 値が WALTHAM 〇・三四・Purina 〇・三八と、やや下がるんですが、家庭で自分の犬の変化を追う用途には、十分機能します。
WALTHAM5段階の便スコア
| スコア | 状態 | 外観の特徴 |
|---|---|---|
| 1 | 非常に硬い | 砕けやすく、小さな塊。便秘傾向 |
| 2 | 硬く乾燥 | 押すとひび割れる。地面に跡を残さない |
| 2.5 | 理想の硬さ | よく形成され、地面にわずかな跡を残す |
| 3 | 標準 | しっかり形があり、拾ったあと地面に跡は残らない |
| 3.5 | やや湿り気 | 形はあるが明らかに跡を残す |
| 4 | 形が崩れ始める | 形の大半を失う |
| 4.5 | ほぼ形なし | はっきりした形が残らない |
| 5 | 液状 | ほぼ水様。急性下痢 |
理想は二・五〜三です。拾い上げたときに便がしっかり形を保っていて、地面に薄い跡は残っても、便そのものが地面に残らない状態。
「拾いやすさ」は健康のサイン
現実的には、袋越しに拾うときの感触が、一番わかりやすい判定材料になります。
- 硬くてコロコロした便(スコア1〜1.5)が数日続く → 水分不足、食物繊維不足、または運動不足
- すっと拾える、適度な弾力(スコア2.5〜3)→ 水分・繊維・運動のバランスが取れている
- 袋越しに形が崩れる(スコア3.5〜4)→ 何かが消化管を急がせている。食べ物を変えたか、ストレス、または軽い感染
- 液体状(スコア5)→ 急性下痢。後述の24〜48時間ルールを参照
茶々丸はドッグフードを変えたときや、散歩先でこっそり草を食べた翌日に、スコアが三・五〜四に落ちることがあります。一〜二日で戻れば様子見、三日続いたら獣医、という線引きを、我が家ではしています。
色が教える健康サイン — 茶色以外は全部要注意?
便の色は、何を食べたかだけでなく、消化管のどこかで出血しているか、胆汁や膵液が正常に分泌されているかを反映します。PetMD の獣医監修記事では、色の異常は消化管・肝臓・膵臓・胆嚢の不調の入口として、扱われています。
便色チャート
| 色 | 想定される意味 | 対応 |
|---|---|---|
| チョコレート色〜濃い茶色 | 健康な便。胆汁が正常に消化された証拠 | — |
| 薄い茶色・黄土色 | 食物繊維の増加、または消化の速さ。単発なら様子見 | 数日続くなら獣医 |
| 黄色・オレンジ | 胆嚢や肝臓、膵臓のトラブルの可能性 | 早めに獣医 |
| 緑色 | 草の大量摂取、または胆汁の過剰排出。殺鼠剤の誤食でも緑色(危険) | 量が多い・繰り返す・元気がないなら緊急 |
| 灰白色(粘土色) | 胆汁不足。胆管閉塞の可能性 | 緊急性あり、獣医へ |
| 白いツブツブ | 米粒状の寄生虫(条虫)、または未消化のカルシウム | 寄生虫は駆虫必要 |
| 鮮やかな赤(血の筋) | ヘマトケジア(大腸・肛門からの出血) | 元気なら翌日、元気がなければ当日 |
| 黒くタール状 | メレナ(上部消化管からの出血) | 緊急。すぐ獣医へ |
赤い血と黒い血、意味が違う
PetMD の解説が、明快です。鮮やかな赤い血はヘマトケジア(hematochezia)と呼ばれ、結腸や肛門近くからの出血を意味します。消化を経ていないため、そのままの色で出てきます。ストレス性の大腸炎や、肛門腺トラブル、または寄生虫でもよく見られる、と書かれています。
一方、黒くてタール状の便はメレナ(melena)で、胃や小腸上部からの出血が消化されて黒くなった状態。こちらは潰瘍・腫瘍・毒物摂取といった深刻な原因のサインで、PetMD は獣医への相談を勧めていて、元気消失・嘔吐・歯茎の蒼白などが伴えば即日の受診が必要、と整理しています。
茶々丸は以前、散歩中に拾い食いしかけたブドウの皮を吐かせてもらった翌日、便に薄く赤い筋が一本、混じっていたことがあります。元気も食欲もあったので、かかりつけ病院の指示でその日は家で様子見、翌日の便で消えていたので、事なきを得ました。この「色は見て一日考えてから動く・見て即動く」の二ステージの判断を持っておくと、冷静に対応できます。
拾い食い全般の予防と対処については、犬の拾い食いをやめさせる方法 で詳しくまとめました。
散歩中のうんち処理、正解は?— 東京都・目黒区の公式ガイドから
散歩中の便は、法的・社会的に「百パーセント持ち帰り」が基本ルールです。
東京都保健医療局の公式ページは「ふんを必ず持ち帰って始末してください」と明示し、目黒区も同様に「ふんは必ず持ち帰り」と繰り返しています。全国の多くの自治体が「ふん害等防止条例」を制定していて、違反すれば罰金(自治体によりますが、二万円以下〜五万円以下のケースが多い)の対象になります。
拾い方の実践フロー
1. 袋を手にかぶせる
袋を裏返して手にはめ、そのまま便を包み込む要領で拾います。直接地面に袋を置いて箸のように使うより、ずっと衛生的で素早い。
2. 草や小石ごと拾う
特に芝生や土の上の便は、下の土を少し一緒にすくう気持ちで拾うと、残留がほぼゼロになります。汁気が染みていれば、上から少し土をかぶせてしばらく置き、ボロっと取れる状態にしてから拾うと、より確実です。
3. 袋の口を縛る
ひと結びではなく、空気を抜いてしっかり結びます。匂いの漏れも、道中でほどけるリスクも、大きく下がります。
4. 自宅で捨てる
AKC(米国ケネルクラブ)のガイドでも、最も現実的で環境負荷も低いのは「家庭ゴミ(可燃)として処分」。自治体によってはトイレに流すのも可(ただし浄化槽の家は不可)。公園のゴミ箱に入れる場合は、「ペットのふん可」と明示されている場所だけに限ります。
おしっこは?— 「水で流す」は最低ライン
便だけでなく、おしっこの処理マナーも近年急速に厳しくなってきました。目黒区は「水で薄く流す」ではなく「十分な量の水でしっかりと洗い流してください」と指導していて、五百ミリリットルの飲料ボトル満杯くらいをしっかりかける、が現在のベースラインです。
おしっこのマナー水と自治体ガイドの詳細、AKC の「おしっこトレーニング」は、散歩中の犬のおしっこマナー でより深掘りしました。
茶々丸との散歩バッグの中身
参考までに、私が毎朝散歩に持ち出しているもの。
- うんち袋3枚(常に3枚ストック、最低でも2枚)
- マナー水500mL(ペットボトルに水道水)
- ウェットティッシュ
- 予備リード
袋三枚の理由は、二回分の便と、不測の軟便・下痢一回分の予備です。経験上、袋を一枚しか持たずに出た日に限って、二回出たり、他の犬のうんちが落ちていて拾ってあげたくなるような場面に遭遇するんです。
うんち袋は何を選ぶ?— 「生分解性」表示の落とし穴
最近のペット用品売り場で目立つのが「生分解性」「コンポスタブル」「エコ」といった表記のうんち袋。結論から言うと、日本の一般家庭で使う限り、環境面での優劣はほぼないと考えていいようです。
生分解性袋の前提条件
AKC の環境ガイドが指摘しているのは、生分解性袋が分解されるためには「産業用コンポスト施設の温度・湿度・酸素」という特殊環境が必要だ、という点。一般的な埋立地では生分解性袋もほぼ分解されず、酸素のない状態でメタンを発生させる懸念も指摘されているそうです。
日本では犬の便を産業コンポストで処理するインフラはほぼ存在しないため、生分解性袋も結局は焼却・埋立されます。焼却なら CO2 の発生量は通常のプラ袋と大差なく、埋立なら分解されずに残る、ということになります。
実用性で選ぶ基準
環境エコの神話を横に置くと、袋選びの基準は三つに絞れます。
強度:散歩中に結んでカバンに入れたときに破れないか。厚み〇・〇一五ミリ以上が目安。
サイズ:便の二倍以上の容量。小さすぎると結ぶ余裕がなく、匂いが漏れる。
匂い対策:最近の袋は内側に消臭フィルムや活性炭を混ぜたものがあります。夏の炎天下の帰り道を数回経験すると、これの価値が、よくわかります。
茶々丸の分は、特別なエコ表示より「破れない・匂い漏れない」の実用性を優先して選んでいます。毎日二回×三六五日×茶々丸の生涯、と考えると、袋の選び方は現実的に続けられることが、最優先です。
いつ獣医に行くべき?— 48時間ルールと緊急サイン
軟便や下痢は、食べ物を変えた・散歩でストレス・暑さで一時的に水を飲みすぎた、といった軽い原因で起きることも多いです。Cornell 大学獣医学部の資料は、健康な成犬の軽い下痢なら十二〜二十四時間の絶食後に消化にやさしいブランドダイエットへ移行することを勧めていて、四十八〜七十二時間を超えて改善がなければ受診を、と明示しています。
受診の目安
様子見可(1〜2日)
- 便が軟らかいが、元気・食欲あり、吐いていない
- 色は通常の茶色系
- 子犬・シニア・持病なしの健康な成犬
- 水を普通に飲めている
24時間以内に受診
- 便が真っ黒(メレナ)
- 鮮血が大量に混じる
- 1日5回以上の下痢
- 元気と食欲が明らかに落ちている
- 吐くのを繰り返す
- お腹を触ると痛がる
即時受診(緊急)
- 灰白色の便+黄疸(白目や歯茎が黄色い)
- 大量の血便+ぐったり
- 脱水症状(皮膚の弾力がなくなる、歯茎が乾く)
- 子犬・シニア・持病ありで下痢が始まった場合
- 誤食・毒物摂取の心当たりがある
PetMD や Cornell の共通見解として、子犬・シニア・持病ありの三グループは、健康な成犬と同じ基準で様子見してはいけない、とされています。脱水が一気に進みやすいため、一回の下痢でも即受診が推奨されています。
脱水チェックの簡単な方法
下痢や嘔吐が続いたら、脱水を疑います。家でできる確認は、二つ。
- 歯茎を指で押す:押して色が戻るまで1〜2秒が正常。3秒以上かかる、または歯茎がベタつかず乾いていたら脱水の兆候。
- 首の後ろの皮膚をつまむ:つまんでパッと離したとき、すぐ戻らず山になって残るなら脱水。
茶々丸の食事管理と月一の体型チェックは 犬のBCS完全ガイド に詳しく書きましたが、体型と同じく「昨日と違う」を捕まえられるかどうかが、早期発見のすべてだと思います。誤食の予防と起きた時の対処は 犬に与えてはいけない食べ物15選 にまとめました。
まとめ:毎日の一拾いが、愛犬と街の未来をつくる
朝の散歩で、電柱の横でちらっと振り返る茶々丸の表情を見ながら、私が毎日やっているのは、実は大きく分けて二つのことです。ひとつは拾う、もうひとつは見る。
拾うほうは、街と近所の人への礼儀。東京都・目黒区の公式ガイドが示す通り、便もおしっこも、痕跡を残さないのが原則です。見るほうは、茶々丸自身への健診。WALTHAM 五段階で二・五〜三のあたりにあるか、色は茶色か、回数は昨日と同じか。拾う一瞬で終わる確認なんですが、この蓄積が、いざという時の「いつから違う」の感覚を育ててくれます。
SiPPO Friends の健康ハブには、愛犬の便の記録を残せる機能があります。日付・硬さ・色・回数を一タップで残せるので、二〜三日続いた変化に気づきやすくなる。そして散歩記録とゴミ拾いコミットメント機能を合わせると、「しっぽが、まちを変える」サイクルを、自分の散歩に組み込めます。
うんちを拾うのは、犬との暮らしの中で最も地味な作業のひとつです。けれど、しゃがんで袋越しに便の形と色を確かめるこの数秒が、茶々丸の健康を守っていて、街を少しだけきれいに保っている。毎日の一拾いの意味は、意外と大きいんです、たぶん。
愛犬の便の状態が普段と違う、血が混じる、下痢が48時間以上続く、元気や食欲がない等の症状がある場合は、自己判断せずにかかりつけの獣医師にご相談ください。
出典・参考文献
- Consistency of faecal scoring using two canine faecal scoring systems — Journal of Small Animal Practice (Cavett et al., 2021)
- Diarrhea — Cornell University College of Veterinary Medicine
- Dog Diarrhea: Causes, Treatment, and Prevention — PetMD
- Dog Pooping Blood: Common Causes and What To Do — PetMD
- Dog Poop Disposal: The Importance of Cleaning Up After Your Dog — American Kennel Club
- 犬の飼い主の皆様へ — 東京都保健医療局
- 飼育マナーを守りましょう! — 目黒区

SiPPO Friends 編集部
犬の飼い主のための情報を、海外の獣医学研究や公的機関の資料をもとにお届けします。


