犬の分離不安とは|留守番中の吠え・破壊の理由と、承認薬の添付文書が書く「叱らない」

分離不安は、飼い主と離れたときの不安から、破壊・不適切な場所での排泄・過剰な吠えが起きる状態です。日本で犬の分離不安に承認されている動物用医薬品は2成分で、どちらの添付文書も薬を「治療の補助」と位置づけています。 薬を飲ませる前提として行動療法があり、クロミカルムの添付文書には「破壊的行動をしたり、汚物で汚していても犬を叱らない」とまで書かれています。
茶々丸(愛犬・キャバプー、9kg)の留守番は、週に3回ほど、スーパーに行くあいだの1時間くらいです。たまに土日に8時間ほど家を空けることもあります。迎えたばかりの頃、出かけてからペットカメラをのぞくと、30分くらい吠え続けていました。今は同じカメラを見ても、大人しくしているか、ベッドの上で寝ています。何かを変えたつもりはなく、自然に慣れたのだと思います。
分離不安について調べてみると、日本で承認されている治療薬の添付文書に、分離不安の定義も、留守番のさせ方の手順も書かれていました。
免責: 本記事は一般的な情報提供を目的としており、獣医師による診断・治療の代わりになるものではありません。愛犬の行動に不安がある場合は、かかりつけの動物病院に相談してください。
留守番中の吠えや破壊は分離不安ですか?
当てはまるのは、留守番中に破壊・不適切な排泄・過剰な吠えの少なくとも1つが出る場合です。日本の添付文書はそう定義しています。
農林水産省の動物用医薬品等データベースに載っているクロミカルム錠の添付文書は、分離不安の原因を「飼い主が外出等で犬と離れることにより犬が不安状態になるために引き起こされる」とし、症状を3つ挙げています。
- 破壊的行動
- 不適切な排便又は排尿行動
- 不適切(過剰)な吠えの行動
飼い主が離れたときに、このうち少なくとも1つ以上を示すものが分離不安です。あわせて「飼い主への過剰な愛着」として、家の中で常に後を追う、離れるほど不安になる、「飼い主が外出の準備をすると不安状態となり、飼い主が帰宅すると過剰に出迎える」といった行動を示すことがある、と書かれています。もう1つの承認薬リコンサイル錠の添付文書も定義はほぼ同じで、症状に「過剰な流涎」(よだれ)が加わっています。
この項目に茶々丸を当てはめてみました。私が服を着ていると、出かけると察して落ち着かなくなります。帰ってくると、ものすごい勢いで興奮して顔を舐めてきます。愛着の項目のうち、外出準備と出迎えはそのまま当てはまります。一方で、留守番中に物を壊したことはなく、粗相もありません(トイレシートからのはみ出しはあります)。吠えも今は収まっています。3つの症状は、今の茶々丸には1つも出ていません。
ただし、後追いのような愛着行動を分離不安の兆候と見るかどうかは、資料によって違います。2025年9月に改訂された Merck Veterinary Manual(獣医師向け)は、家の中で家族の後をついて回るような密着した行動を見せる犬でも、分離不安のリスクは見せない犬より高くない、としています。後追いだけで分離不安と決めつける必要はありません。一方で同じマニュアルは、分離不安の犬は帰宅時の出迎えが大げさになりやすく、落ち着かせるのが難しいこともある、とも書いています。
どのくらいの犬が分離不安になりますか?
調査によって5%から20%まで幅があります。
フィンランドのヘルシンキ大学の Salonen ら(2020年、Scientific Reports)が、264犬種13,715頭の飼い主にアンケートをとった研究では、分離関連行動の有病率は5%でした。調べた7つの不安関連の特性のうち、攻撃性(14%)とともに最も少ない部類でした。いちばん多かったのは音への恐怖で、32%の犬が少なくとも1種類の音を強く怖がっていました。
一方、Sargisson(2014年、Veterinary Medicine: Research and Reports)のレビューは、分離関連の問題行動は犬全体の20%と推定されてきたと紹介しています。どこからを問題とみなすかの定義と、調べ方の違いで、数字はこれだけ変わります。
Salonen らの研究では、分離関連行動を示す犬はそうでない犬に比べて、多動・衝動性が4.1倍、恐がりの傾向が2.8倍多く見られました。Merck Veterinary Manual は、音への恐怖症と分離不安はかなりの割合で併発するとしています。ただし Salonen らのデータでは、音に敏感な犬で分離関連行動が1.4倍多かった一方、分離関連行動を示す犬が音を怖がる割合は、示さない犬より高くありませんでした。留守番中に雷が鳴って怖い思いをしたことがきっかけで、分離不安が始まることもあるそうです。雷や花火への恐怖については雷・花火を怖がる犬の記事にまとめています。
犬が留守番中に物を壊す本当の理由は何ですか?
ひとつではありません。そして、留守番中に壊したからといって、分離不安とは限りません。
おもしろいことに、日本の2つの承認薬の添付文書は、破壊的行動の理由を別々に書いています。
| 添付文書 | 破壊的行動の説明 |
|---|---|
| クロミカルム錠 | 「犬が飼い主の注意を引こうとする為に起こるもので、特に、ドア、ドア近くの壁、床あるいは窓を壊すことが多い」 |
| リコンサイル錠 | 「犬が今の状態から逃れようとして起こるもので、特に、ドア、ドア近くの壁、床あるいは窓を壊すことが多い」 |
壊す場所の記述は同じなのに、理由は「注意を引こうとする為」と「逃れようとして」で分かれています。
研究でも、分離に関わる問題は一枚岩ではないという結果が出ています。英国リンカーン大学の de Assis ら(2020年、Frontiers in Veterinary Science)は、分離に関わる問題のサインを1つ以上示す犬2,757頭分の回答を集めました。解析に使う56項目すべてに「わからない」以外の答えがそろっていた762頭のデータを解析すると、問題は4つのタイプに分かれました。出口へのフラストレーション(exit frustration)、転嫁・反応型(redirected reactive)、反応・抑制型(reactive inhibited)、そして退屈(boredom)です。外に出たくてドアを壊す犬と、暇でソファをかじる犬は、残った傷が似ていても理由が違います。ただしこの研究は診断の枠組みを提案したもので、タイプごとにどの治療が効くかまでは調べていません。
Merck Veterinary Manual は、分離不安と診断するには、ほかのよくある原因を除外する必要があるとしています。挙げられているのは、トイレのしつけが済んでいない、探索遊びやあさり行動、外の刺激による興奮や不安、音への嫌悪、閉じ込められることへの不安です。同じマニュアルの破壊行動の節には、かじる、物を盗る、ゴミをあさる、掘るといった行動の多くは正常な探索行動で、目を離していてほかにすることがないときに破壊的になる、と書かれています。
茶々丸も、たまにゴミ箱からティッシュを引っぱり出して遊んでいます。これは分離不安の破壊というより、Merck のいう探索遊びやあさり行動のほうに近いと思っています。原因のタイプを確かめないまま対策グッズだけ揃えても外れることがあるのは、こういう違いがあるからです。
留守番カメラの録画で何がわかりますか?
分離不安かどうかを見分ける、大きな手がかりになります。留守番中に何が起きているかは、飼い主にはそのままでは見えません。
分離に関わる問題は飼い主がいないあいだに起きるので、Sargisson(2014年)が書いているとおり、診断は壊れた物や近所からの吠えの報告といった間接的な証拠に頼りがちです。獣医行動学の専門医である Horwitz と Landsberg が執筆した VCA Animal Hospitals の解説は、行動が飼い主の外出に伴う不安によるものかを確かめるには、留守番中の様子を録音か録画するのがおそらく最良の方法だとしています。
Merck Veterinary Manual によると、分離不安のサインは飼い主が出かけてから最初の15〜30分以内に出ることが多く、靴を履く、鍵を手に取る、ドアに向かうといった外出の準備の段階で始まる犬も多いそうです。時間とともにサインは変わり、鳴き声は早い時間にピークを迎え、そのあとはうろうろ歩くなどの行動が目立ってきます。録画は、ほかの不安のサインや、別の診断につながる刺激や行動がないかを確かめるのにも役立つとされています。
茶々丸が出かけてから30分くらい吠えていたのは、時間帯だけ見れば Merck の記述と重なります。ただ、1頭の観察は何の証明にもなりません。あの頃の吠えが分離不安だったのか、単に新しい家での留守番に慣れていなかったのかは、今となってはわかりません。わかるのは、カメラで見ていたから「出かけてから30分くらい吠えていた」と具体的に言える、ということです。もし今後また吠え始めたら、吠えていた時間の長さと、外出準備のどの段階から落ち着かなくなるかを、そのまま獣医師に伝えられます。
帰ってきて部屋が荒れていたら叱るべきですか?
叱っても効果は見込めません。クロミカルムの添付文書にも「叱らない」と書かれています。
クロミカルム錠の添付文書の「帰宅時の実施要領」はこうです。
飼い主の外出中に犬が家の中で破壊的行動をしたり、汚物で汚していても犬を叱らない。
叱っても効果が見込めない理由について、Sargisson(2014年)は、帰宅してからの罰は問題行動と時間的に結び付かないので効果は見込めないとし、こう結論しています。
Thus, punishment is best avoided in dealing with dogs with separation-related problems. (したがって、分離に関わる問題を抱える犬に対しては、罰は避けるのが最善である)
叱ることには、効果が見込めないだけでなく、害もあります。Herron ら(2009年、Applied Animal Behaviour Science)が行動診療科を受診した犬の飼い主140人を調べた研究では、叩く・蹴るをされた犬の43%、にらみつけられた犬の30%が、攻撃的な反応を示しました。この調査で受診理由に分離不安を含んでいた犬は28頭(20%)でした。
VCA Animal Hospitals の解説は、帰宅したら罰も興奮した出迎えも避けるよう勧めています。犬が落ち着くまで構わず(10〜15分かかることもある)、早く落ち着けばそのぶん早く構ってもらえる、と犬が学べるようにするためです。クロミカルムの添付文書も、帰宅しても犬が静かになってくつろぐまで、遊んだり触れたり話し掛けたりしないよう書いています。
茶々丸の出迎えでは、私はこの通りにはしていません。テンションを上げすぎないようにはしながら、顔は舐めさせています。茶々丸は散歩中も、すれ違う人と目が合って撫でてもらえそうだと「ピピーッ!!」と鳴いてしまう犬で、熱烈な出迎えは元々の性格だろうと思っています。上の手順は分離不安の治療中の犬に向けたものです。破壊も粗相もない今の茶々丸には、そこまでしていません。
出かける前の合図にはどう慣らせばいいですか?
ここは資料によって力点が違います。
| 資料 | 外出の合図(鍵・上着・鞄など)の扱い |
|---|---|
| クロミカルム錠の添付文書 | 外出しない日にも鍵や鞄を持ったりコートを着たりして「外出するふり」をし、一連の動作に慣れさせる |
| VCA Animal Hospitals | 合図をできるだけ避け、歯磨き、着替え、鍵や鞄を持つといった準備は犬の見えないところで済ませる。もう1つの方法として、在宅中に鍵や上着などの合図を見せ、外出の予告にならないよう慣らす方法も挙げている |
| Merck Veterinary Manual(2025年改訂) | 中等度から重度の犬には、安全の合図を使った段階的な外出トレーニングを勧める。鍵を持つ、靴を履くといった外出の予告と出発の結び付きを外す、従来の勧め方とは異なる方法 |
Merck のいう安全の合図とは、これまでの外出と結び付いていない新しい物や音のことです。その合図を出してから、犬が不安にならない程度のごく短い外出の練習を毎日重ね、少しずつ時間を延ばします。合図は「今回の外出は、不安になる前に飼い主が帰ってくる」という目印になります。このトレーニングは完了まで数ヵ月かかることがある、とも書かれています。
茶々丸は、私が服を着ると出かけると察します。ただ、どちらかというと「散歩に行くんでしょ?」という様子で、「お留守番だよ」と言うと、信じられないという顔でこちらを見て、そのまま大人しくなります。
合図の扱いとは別の柱として、留守番の時間そのものに少しずつ慣らす方法があります。Sargisson(2014年)は、最も効果的な行動療法は系統的脱感作(不安を起こさない短い外出から少しずつ延ばす)とカウンターコンディショニング(留守番を良いことと結び付け直す)の組み合わせとみられる、としています。具体的には、ごく短い時間だけ離れてすぐ戻り、少しずつ外出を延ばす。出かける直前に食べ物を与え、飼い主の不在と食べる楽しみを結び付ける。悪化したら時間を短く戻す、という進め方です。
同じレビューは、Butler ら(2011年、Applied Animal Behaviour Science)の研究で、系統的脱感作とカウンターコンディショニングのプログラムが8頭の分離に関わる問題行動に有効だったと紹介しています。実施したのは専門家ではなく飼い主で、外出時間の延ばし方も一定ではなかったにもかかわらず、です。8頭の研究なので大きなことは言えませんが、家庭でできる方法だという点は心強いと思います。
一度にたくさんの手順を抱え込まないことも大切です。Sargisson は、分離に関わる問題を減らす方法について6つ以上の指示を受けた飼い主は、5つ以下の飼い主より、改善を報告する割合が有意に低かったという研究を紹介し、指示はできるだけ少なくするよう勧めています。愛犬に合った進め方は、獣医師と相談して絞り込んでください。
分離不安の薬は日本にありますか?
あります。ただし、薬だけで治すものではありません。
動物用医薬品等データベースで効能効果に「分離不安」を含む製品を検索すると、クロミカルム錠(クロミプラミン塩酸塩、1999年承認)の2製品と、リコンサイル錠(フルオキセチン、2013年承認)の4製品が出てきます(2026年10月時点)。成分としては2つです。効能効果の欄にはそれぞれこう書かれています。
犬:飼い主から離れることに起因する分離不安(飼い主のいない間の破壊、吠えの行動ならびに不適切な場所での排便、排尿行動)治療の補助
犬:行動療法を伴う分離不安の治療の補助。
どちらも獣医師の処方や指示がなければ使えない要指示医薬品で、リコンサイル錠は劇薬にも指定されています。投与期間にも縛りがあります。クロミカルム錠は2〜3ヵ月の投与が必要とされる一方で、改善されなくても3ヵ月を超えて投与しないこと、1回の処方は1週間分までとし、獣医師が週に1回程度、行動療法がきちんと行われているかを確認することが定められています。リコンサイル錠は4〜8週間の投与が必要とされ、8週間以内に改善がなければ治療内容を見直すよう書かれています。
効果の根拠になった試験も見ておきます。クロミプラミンの試験では、標準用量の群でも、吠えだけはプラセボと統計的に有意な差が出ませんでした。King ら(2000年、Applied Animal Behaviour Science)が95頭を標準用量・低用量・プラセボの3群に分けて2〜3ヵ月比べました。全頭が行動療法を受けたうえでの比較です。標準用量の群は、破壊・排便・排尿の改善がプラセボより少なくとも3倍速いと評価されました。しかし吠えについては、どの時点でも標準用量とプラセボのあいだに統計的な有意差は出ていません。低用量の群は、プラセボと統計的に有意な差がありませんでした。なお、この試験の筆頭著者はノバルティス アニマルヘルス(スイス)の所属です。
フルオキセチンについては、Sargisson(2014年)のレビューが Simpson ら(2007年)の試験を紹介しています。行動療法を受けた犬のうち、改善したのはフルオキセチン群の72%に対し、プラセボ群でも50%でした。この試験では薬を足すと改善する犬が増えましたが、行動療法だけでも半数は改善しているとも読めます。Sargisson は、薬は行動修正と組み合わせれば役に立つかもしれないが、薬だけで問題行動をなくせる見込みは低い、と書いています。
副作用として、クロミカルム錠の添付文書には嘔吐・食欲不振・嗜眠(ときに下痢)、リコンサイル錠には食欲不振・嗜眠・鎮静・震え・瞳孔反射の異常・嘔吐が挙がっています。てんかんなどのけいれん性の病気がある犬には慎重に判断するよう書かれていて、クロミカルム錠では、抗てんかん薬のゾニサミドやアミトラズを含む MAO 阻害剤との併用をしないこととされています。持病や飲んでいる薬があれば、必ず獣医師に伝えてください(ゾニサミドについては犬のてんかんの薬の記事で調べました)。
相談先は、まずかかりつけの動物病院です。行動の問題を専門に診る獣医師として、一般社団法人日本獣医動物行動学会(2025年に前身の研究会から発足)は、前身の時代の2013年から行動診療科認定医の制度を設けていて、2025年までに19名を認定しています。学会のサイトには行動診療を行う施設の地域別一覧もあります。
薬を使う場合、数週間から数ヵ月、毎日飲ませながら獣医師に経過を見てもらうことになります。SiPPO Friends の健康管理では服薬を記録できます。留守番の様子は、マイページのメモに「今日は出かけて10分で吠え始めた」「玄関のドアをかじっていた」のように書き留めておけます。飲ませた記録と留守番の様子を残しておけば、受診のときに経過を説明しやすくなります。
まとめ
- 分離不安は、飼い主と離れたときの不安から、破壊・不適切な排泄・過剰な吠えの少なくとも1つが出る状態。後追いだけでは決めつけない
- 有病率は調査によって5%(13,715頭のアンケート)から20%(推定)まで幅がある
- 留守番中の破壊には、退屈やあさり行動など別の理由もある。まず録画で確かめる
- 帰宅後に叱っても効果は見込めない。承認薬の添付文書にも「叱らない」と書かれている
- 外出の合図は、避ける方法と慣らす方法があり、Merck は中等度から重度の犬に新しい安全の合図を使う方法を勧める。Sargisson のレビューでは、最も効果的とみられる行動療法は系統的脱感作とカウンターコンディショニングの組み合わせ
- 日本の承認薬はクロミカルムとリコンサイルの2成分。どちらも「治療の補助」で、クロミプラミンの試験では吠えに有意差が出ていない
茶々丸の留守番は、今のところ問題になっていません。吠えていた頃のこともカメラで見ていたので、「出かけてから30分くらい吠えていた」と具体的に言えます。留守番の様子が気になっている方は、まず一度、出かけてすぐの30分を録画してみてください。
この記事は一般的な情報提供を目的としており、獣医師の診断に代わるものではありません。愛犬の行動に不安がある場合は、かかりつけの獣医師にご相談ください。
よくある質問
- 犬が留守番中に吠えたり物を壊したりするのは分離不安ですか?
- 分離不安の可能性はありますが、それだけとは限りません。探索遊びやゴミあさり、外の物音への反応、トイレのしつけが済んでいないことでも似た行動は起こります。Merck Veterinary Manual は、こうした原因を除外して初めて分離不安と診断するとしています。まず留守番中の様子を録画し、疑わしければ動物病院に相談してください。
- 犬の分離不安は薬で治りますか?
- 薬だけで治すものではありません。日本で犬の分離不安に承認されている動物用医薬品はクロミカルム(クロミプラミン)とリコンサイル(フルオキセチン)の2成分で、どちらも添付文書で「治療の補助」とされ、行動療法との併用が前提です。獣医師の処方が必要な要指示医薬品です。
- 留守番中に部屋を荒らした犬は叱ったほうがいいですか?
- 叱っても効果は見込めません。帰宅してからの罰は、問題行動と時間的に結び付かないからです。クロミカルムの添付文書にも、飼い主の外出中に破壊的行動をしたり汚物で汚していても犬を叱らない、と書かれています。VCA Animal Hospitals は、罰も興奮した出迎えも避け、犬が落ち着くまで構わないよう勧めています。
- 分離不安の犬はどのくらいいますか?
- 調査によって幅があります。フィンランドの犬13,715頭を飼い主アンケートで調べた Salonen らの研究(2020年)では、分離関連行動の有病率は5%でした。Sargisson(2014年)のレビューは、犬全体の20%と推定されてきたと紹介しています。どこからを問題とみなすかの違いで、数字が大きく変わります。
- 分離不安はどこに相談すればいいですか?
- まずはかかりつけの動物病院です。行動の問題を専門に診る獣医師として、日本獣医動物行動学会が行動診療科認定医を認定しており、学会サイトに行動診療を行う施設の地域別一覧があります。受診するときは留守番中の録画を持っていくと、診断の材料になります。
出典・参考文献
- クロミカルム錠20mg(動物用医薬品等データベース) — 農林水産省 動物医薬品検査所
- リコンサイル錠8mg(動物用医薬品等データベース) — 農林水産省 動物医薬品検査所
- Treatment of separation anxiety in dogs with clomipramine: results from a prospective, randomized, double-blind, placebo-controlled, parallel-group, multicenter clinical trial — Applied Animal Behaviour Science(King JN ほか, 2000;67(4):255-275)
- Effects of reconcile (fluoxetine) chewable tablets plus behavior management for canine separation anxiety — Veterinary Therapeutics(Simpson BS ほか, 2007;8(1):18-31)
- Canine separation anxiety: strategies for treatment and management — Veterinary Medicine: Research and Reports(Sargisson RJ, 2014;5:143-151)
- Prevalence, comorbidity, and breed differences in canine anxiety in 13,700 Finnish pet dogs — Scientific Reports(Salonen M ほか, 2020;10:2962)
- Developing Diagnostic Frameworks in Veterinary Behavioral Medicine: Disambiguating Separation Related Problems in Dogs — Frontiers in Veterinary Science(de Assis LS ほか, 2020;6:499)
- Survey of the use and outcome of confrontational and non-confrontational training methods in client-owned dogs showing undesired behaviors — Applied Animal Behaviour Science(Herron ME ほか, 2009;117(1-2):47-54)
- The efficacy of systematic desensitization for treating the separation-related problem behaviour of domestic dogs — Applied Animal Behaviour Science(Butler R ほか, 2011;129(2-4):136-145)
- Behavior Problems of Dogs — Merck Veterinary Manual(Stephanie Borns-Weil, DVM, DACVB, 2025年9月改訂)
- Separation Anxiety in Dogs — VCA Animal Hospitals(Debra Horwitz, DVM, DACVB & Gary Landsberg, DVM, DACVB)
- 一般社団法人日本獣医動物行動学会 — 一般社団法人日本獣医動物行動学会
愛犬の毎日を、記録に残しませんか
散歩のルートも、体重や通院のメモも、気づいた体の変化も。SiPPO Friends はすべての機能を無料で使えます。

SiPPO Friends 編集部
犬の飼い主のための情報を、海外の獣医学研究や公的機関の資料をもとにお届けします。


