犬のてんかん薬は日本に2成分だけ|承認薬3製品の添付文書を読み比べた

愛犬がてんかんと診断されて薬を処方されたとき、その薬の名前を検索した人は多いと思います。ゾニサミド、フェノバルビタール、臭化カリウム。日本語の記事を読んでいくと、この3つが並べて紹介されていることがよくあります。
ところが農林水産省のデータベースを引くと、話が合いません。日本で犬用として承認されている抗てんかん薬は、ゾニサミドとイメピトインの2成分だけです。フェノバルビタールも臭化カリウムも、犬用の承認製品が存在しません。
それなのに、日本の承認薬の添付文書は、その2剤の名前を堂々と書いています。エピレス錠は切り替え先として名指しし、ペクシオン錠は「犬に用いられる主な抗てんかん薬」と呼んでいます。
この記事では、実際に読める3製品の添付文書(コンセーブ錠・エピレス錠・ペクシオン錠)を読み比べ、そこに書かれていない薬がなぜ登場するのかを、公的データベースと法令、そして欧米のコンセンサス文書から整理します。編集部として一次資料に当たった記録であり、特定の製品をすすめるものではありません。
日本で犬のてんかんに使える承認薬は、何種類あるのか?
有効成分でいえば2つです。
農林水産省の動物医薬品検査所が運営する動物用医薬品等データベースは、承認されている動物用医薬品の添付文書を誰でも読めるように公開しています。ここで効能効果に「てんかん」を含む製品を検索すると、2026年8月時点で10件がヒットします。
| 有効成分 | 製品名 | 規格 | 製造販売業者 |
|---|---|---|---|
| ゾニサミド | コンセーブ錠 | 12.5mg / 25mg / 100mg | 物産アニマルヘルス |
| ゾニサミド | エピレス錠 | 10mg / 20mg / 40mg / 80mg | 共立製薬 |
| イメピトイン | ペクシオン錠 | 50mg / 100mg / 400mg | ベーリンガーインゲルハイムアニマルヘルスジャパン |
10という数字は規格の数であって、成分の数ではありません。ゾニサミドが7規格、イメピトインが3規格。それで全部です。
同じデータベースで、日本語の解説記事によく出てくる他の薬を引くとこうなります。
| 検索した成分 | ヒット数 | 内容 |
|---|---|---|
| フェノバルビタール | 0件 | 主成分・品名・一般的名称のどれで引いても0件 |
| 臭化カリウム | 1件 | 強力OSM(後述。抗てんかん薬ではない) |
| レベチラセタム | 0件 | — |
| プリミドン | 0件 | — |
臭化カリウムの1件は、期待するようなものではありませんでした。強力OSMという1957年承認の配合注射剤で、ヨウ化カリウム・臭化カリウム・塩化カルシウム水和物・サリチル酸ナトリウムを含みます。効能効果は「骨軟症、解熱、鎮痛、消炎」。てんかんとは関係のない薬です。臭化カリウムの量も100mLあたり50mgで、同じ製剤に入っている他の3成分(2000〜4000mg)の40分の1から80分の1にとどまります。
なぜ添付文書は、日本にない薬の名前を書いているのか?
ここが、この記事でいちばん奇妙に見える部分です。
エピレス錠の添付文書には、この薬を続けられないと判断した場合の対応が書かれています。
投与量の上限(15.0mg/kg/回の1日2回)でも発作が減少せず、あるいは最低投与量(2.5~5.0mg/kg/回の1日2回)でも副作用が消失せず、本剤の投与継続が好ましくないと判断された場合は、投与を漸減中止して他の抗てんかん薬(フェノバルビタールあるいは臭化カリウム)に変更する。
— エピレス錠10mg 添付文書「用法用量」より
切り替え先として、2剤が名指しされています。どちらも、犬用の承認製品が国内にない薬です。
ペクシオン錠の添付文書は、さらに踏み込んだ言い方をしています。
フェノバルビタール、臭化カリウム及びレベチラセタム等の犬に用いられる主な抗てんかん薬が代謝を受ける際の主要代謝酵素はCYP1Aではなく、フェノバルビタール、臭化カリウム及びレベチラセタムと併用した症例では、有害な相互作用は認められていない。
— ペクシオン錠100mg 添付文書「相互作用」より
「犬に用いられる主な抗てんかん薬」として挙げられた3つは、いずれも犬用の承認製品が国内にありません。コンセーブ錠も同じで、臭化カリウムとの併用時の注意にまるまる一節を割いています。
つまり日本の添付文書は、日本に承認製品がない薬が実際に使われていることを前提にして書かれています。
法律はどう定めているのか
未承認の薬を動物に使うことについて、医薬品医療機器等法(薬機法)には規定があります。第83条の3が「使用の禁止」です。
何人も、直接の容器若しくは直接の被包に第五十条(略)に規定する事項が記載されている医薬品以外の医薬品(略)を対象動物に使用してはならない。
— 医薬品医療機器等法 第83条の3
鍵は「対象動物」という言葉です。この法律で対象動物が何を指すかは第83条第1項に定義があり、「牛、豚その他の食用に供される動物として農林水産省令で定めるもの」とされています。その農林水産省令が動物用医薬品等取締規則で、第24条に範囲が列挙されています。
一 牛、馬及び豚 二 鶏及びうずら 三 蜜蜂 四 食用に供するために養殖されている水産動物
— 動物用医薬品等取締規則 第24条(対象動物の範囲)
犬は入っていません。第83条の4の使用規制も、条文が「対象動物の肉、乳その他の食用に供される生産物で人の健康を損なうおそれ」を理由に置いているとおり、食用動物を念頭にした仕組みです。
条文から読み取れるのはここまでです。実際にどの薬を処方するかは獣医師の診療上の判断であり、その内容をこの記事で断定することはしません。愛犬の処方について疑問があれば、かかりつけの獣医師に直接聞いてください。添付文書に書かれた薬の名前を手がかりにするだけでも、会話は具体的になります。
同じゾニサミドなのに、コンセーブとエピレスで何が違うのか?
有効成分が同じでも、承認された内容は同じではありません。読み比べると、飼い主に関係する部分がいくつも食い違います。
| コンセーブ錠 | エピレス錠 | |
|---|---|---|
| 効能効果 | 部分発作(二次性全般化発作を含む)及び全般発作のコントロール | 特発性てんかんに伴う発作の低減 |
| 対象体重 | 1.25kg以上(体重別表の下限) | 2.0kg以上 |
| 月齢の制限 | 生後6カ月未満には投与しない | 5ヵ月齢未満には使用しない |
| 増量の上限 | 通常10mg/kg/回まで | 15.0mg/kg/回まで |
| 錠剤の分割 | 院内で分割・分包する手順を規定 | 割錠及び粉砕をしない |
| 血中濃度の目安 | トラフで10〜40µg/mL | 10〜40µg/mL |
| 効果が出るまで | 最大効果まで5日程度 | 有効血中濃度到達に約7日 |
| 大型犬 | 40〜80kgの投与量表あり | 22kgを超える大型犬の有効性と安全性は確認されていない |
| 承認 | 2014年8月22日(12.5mgのみ2025年8月20日) | 2015年2月4日 |
効能効果の書きぶりから違います。コンセーブ錠は発作型を明記して「コントロール」、エピレス錠は発作の「低減」。同じ病気に使う同じ成分でも、承認の枠組みが揃っていません。
いちばん実務的に効いてくるのは、錠剤を割ってよいかどうかです。エピレス錠は「本剤を投与する際、錠剤を割錠及び粉砕しないこと」と明記しています。一方のコンセーブ錠は、分割を前提にした指示を書いています。
本剤を分割する場合には、獣医師が、院内の適切な場所で実施し、院内で分包すること。なお、コンセーブ錠12.5mgを2分割する場合には、ピルカッター等の正確に分割できる器具を用いること。
— コンセーブ錠12.5mg 添付文書「重要な基本的注意」より
同じ成分の薬で、正反対の指示が出ています。処方された製品がどちらかによって、家でやってよいことが変わります。
表にある「トラフ」は、次の投与の直前、血中の薬の濃度がいちばん低くなるタイミングを指します。エピレス錠の添付文書は同じものを定常状態最低血中濃度と呼んでいます。目安の範囲は両方とも10〜40µg/mLで一致しますが、測る頻度の書き方は違います。コンセーブ錠は初回投与や用量を変更した約1週間後に測り、症状が安定していれば6カ月に1回程度。エピレス錠は投薬中1〜6週間毎のモニタリングのなかに血清中ゾニサミド濃度の測定を含めています。
大型犬の扱いも対照的です。エピレス錠の添付文書には「本剤の22kgを超える大型犬に対する有効性と安全性は確認されていない」という一文があります。ただし用法用量の表には32.0kg以上64.0kg未満の行があるので、用量の設計がないわけではありません。臨床で確認された範囲と、用量表の範囲が別だと読むのが自然です。コンセーブ錠のほうは、体重別初回投与量の表に40kg以上80kg未満の行を置いています。
副作用の書き方も違います。コンセーブ錠は嘔吐・下痢・食欲不振・活動性低下を挙げ、エピレス錠は「ときに(5%未満)嘔吐、流涎、軟便、食欲低下、興奮、震え、跛行、活カ低下」と頻度つきで書いています(原文の「活カ低下」は活力低下の誤記と思われます)。両方に共通するのは、貧血・赤血球や白血球の減少・血小板の減少への注意です。ゾニサミドがスルホンアミド系(エピレス錠の添付文書はサルファ剤や炭酸脱水酵素阻害剤のアセタゾラミドを同じ系統として挙げています)の構造を持つことに由来する注意で、エピレス錠は貧血のある犬への投与を禁忌にしています。
コンセーブ錠の添付文書には、臨床試験の結果も載っています。てんかん発作型別の有効率は、全般発作が79.4%、部分発作(二次性全般化発作を除く)が71.4%、部分発作からの二次性全般化発作が57.1%でした。ただし何をもって有効としたかの定義も、症例数も添付文書には書かれていません。後で出てくる海外の数値とは指標が違う可能性が高く、並べて優劣を比べられる数字ではない点に注意してください。
ペクシオン(イメピトイン)は、何が違う薬なのか?
いちばん目を引くのは、効能効果に発作以外のものが入っていることです。
犬:音恐怖症による不安及び恐怖に関連する問題行動の軽減。特発性てんかんにおける全般発作の発作頻度の軽減(ただし、発作重積及び群発発作を除く)。
— ペクシオン錠100mg 添付文書「効能効果」より
花火や雷を怖がる犬に使える薬として、日本で承認されています。雷や花火を怖がる犬の記事で扱ったノイズフォビアに、国内の承認薬があるということです。しかもそれが、てんかんの薬と同じ製品です。
てんかん側の効能には、はっきりした除外があります。発作重積と群発発作は対象外です。添付文書は「特発性てんかんの発作重積の予防に対する有効性は未確認であるので、発作重積の既往歴がある症例には他の治療法を考慮すること」と書き、緊急時にはジアゼパムなど短時間作用型ベンゾジアゼピンの静脈内投与か麻酔が推奨されるとしています。有効性が確認されていない範囲を、効能から外して明示しているわけです。なお米国獣医内科学会(ACVIM)の2015年コンセンサス声明は、抗てんかん薬を始めるべき状態のひとつに「急性反復発作、あるいは発作重積(発作が5分以上続く、または24時間以内に3回以上の全般発作)」を挙げています。
副作用の書き方も具体的でした。音恐怖症の臨床試験では、治療開始初期に約30%の症例で軽度または中等度の一過性の運動失調がみられています。そのうち半数以上は投薬を続けたまま24時間以内に自然回復し、残りの半数は48時間以内に回復したと記載されています。飼い主が「ふらついている、やめるべきか」と迷う場面を想定した書き方です。
長期投与についての注意もあります。アルビノラットの毒性試験で網膜変性の所見が増えたため、長期に投与する場合は定期的な眼底検査が望ましいとされています。犬の安全性試験では推奨用量の5倍量を6ヵ月投与しても視覚と網膜への影響は認められなかった、とも併記されています。
投薬の実務では、食事との関係が重要です。
本剤を空腹時に投与した際の生物学的利用能は、食餌とともに又は食後に投与した場合よりも高いことから、同じ犬に対しては、食前に投与するか、食餌とともに又は食後に投与するか等の投与方法を変更しないこと。
— ペクシオン錠100mg 添付文書「重要な基本的注意」より
飲ませるタイミングを途中で変えると、体に入る量が変わります。「今日はごはんの前に飲ませた」という程度の変更が、薬の効き方を動かしうるということです。
飲み忘れと吐き戻しへの対応も、はっきり書かれています。投与した直後に吐き出した場合は、同じ量をもう一度与えます。完全に飲み込んだあとで吐いた場合や、投与を忘れた場合は、次回の予定時刻まで待って、通常どおりの量を与えます。つまり、2回分をまとめて与えることはしません。飼い主がいちばん迷う場面に、添付文書は先回りして答えを置いています。
海外のガイドラインは、これらの薬をどう評価しているのか?
日本の承認状況は、世界的にみるとかなり特殊です。
先ほど触れたACVIMのコンセンサス声明には、各国の承認状況が1文で整理されています。
Primidone is the only AED that is specifically approved for dogs in the United States, whereas phenobarbital, imepitoin, and (as an additional drug) potassium bromide are approved for treatment of epilepsy in dogs in Europe.
(米国で犬に対して特別に承認されている抗てんかん薬はプリミドンだけであり、欧州ではフェノバルビタール、イメピトイン、および追加薬として臭化カリウムが、犬のてんかん治療薬として承認されている)
— ACVIM「2015 ACVIM Small Animal Consensus Statement on Seizure Management in Dogs」より翻訳
日本で承認されている2成分のうち、イメピトインは欧州にもあります。しかしゾニサミドは、米国にも欧州にも犬用の承認薬がありません。逆に欧米で使われているフェノバルビタールは、日本に犬用の承認製品がない。3つの地域で、承認されている薬が食い違っています。
欧州のIVETF(International Veterinary Epilepsy Task Force)が2015年に出したコンセンサスは、日本の名前を出してこう書いています。
There are few reports on the use of zonisamide in dogs, despite it being licensed for treatment of canine epilepsy in Japan.
(日本で犬のてんかん治療薬として承認されているにもかかわらず、犬でのゾニサミドの使用報告は少ない)
— IVETF「International Veterinary Epilepsy Task Force consensus proposal: medical treatment of canine epilepsy in Europe」より翻訳
証拠の量にも差があります。Charalambousらが2014年に発表した犬のてんかん治療のシステマティックレビューは、26試験・計1153頭を評価したうえで、フェノバルビタールとイメピトインの単独療法には良好なレベルの証拠があるとしました。一方でゾニサミドについては、3試験・計33頭を検討して次のように結論しています。
However, there was overall insufficient evidence for recommending the use of zonisamide either as a monotherapy or as an adjunct AED.
(しかしながら、ゾニサミドを単独療法としても追加の抗てんかん薬としても推奨するには、全体として証拠が不十分だった)
— Charalambous M, Brodbelt D, Volk HA「Treatment in canine epilepsy — a systematic review」より翻訳
数字でも差は明確です。ACVIMのコンセンサスによると、フェノバルビタール単独療法は8試験・計311頭が評価され、発作が50%を超えて減った犬の割合は82%(258頭)でした。同じ文書でゾニサミドの単独療法として引かれているのは10頭の研究1件だけで、そのうち60%(6頭)が月間の発作頻度を50%以上減らしています。IVETFの2015年コンセンサスは、血中濃度が治療域(25〜35mg/L)に保たれていれば特発性てんかんの犬の約60〜93%で発作頻度が減ると記載しています。これは発作が6割から9割減るという意味ではなく、効果がみられる犬の割合です。
日本のもう一方の承認成分であるイメピトインには、直接の比較試験があります。ACVIMのコンセンサスが引く226頭の無作為化盲検試験では、全般発作を抑える効果はフェノバルビタールと同等でした。一方で傾眠や運動失調、多飲、食欲増進といった有害事象の頻度は、フェノバルビタール群のほうが有意に高かったと記載されています。
ここで気をつけたいのは、証拠が少ないことは効かないことを意味しない、という点です。3つの文書はいずれも、研究の数と規模が足りないと言っています。効果を否定したわけではありません。日本ではゾニサミドが承認薬として使われている一方、犬での使用を報告した研究そのものが少ない、という状態です。
もうひとつ、Charalambousらのレビューには読者に効く指摘があります。プラセボ対照試験3件の結果を統合した研究では、プラセボを投与された犬でも発作が約30%減っていました。ただしレビューの著者は、この研究のプラセボ群の犬が従来の抗てんかん薬を使い続けていたため、結果に影響した可能性があるとも書き添えています。それでも、てんかんには自然に波があり、薬を変えた直後に減ったように見えてもそれだけでは判断できないという指摘は残ります。獣医師が血中濃度や記録を重視するのは、この揺らぎを分けるためです。
飼い主が添付文書から持ち帰れることは何か?
3製品を読み比べて、家でできることに直結する記述を抜き出しました。
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急にやめない。 これは3製品すべてに共通します。コンセーブ錠は急激な減量や中止によっててんかん重積状態があらわれることがあるとし、エピレス錠は「さらに強い発作が発現することがある」と書いています。飲ませ忘れが続いたときや、副作用が心配になったときに自己判断で止めるのが、いちばん危ない行動です。
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フードを変える前に相談する。 臭化カリウムを併用している場合、食事の変更が血中濃度を動かします。コンセーブ錠の添付文書には、食事の変更による血中臭化カリウム濃度の低下が原因と考えられる群発発作が認められた、と実例が書かれています。低塩食では吸収が促進され、高塩食では阻害されるという機序も併記されています。IVETFの2015年コンセンサスは、食事を変えるなら最低5日はかけるよう勧めています。臭化カリウムの半減期は犬で25〜46日と長く、定常状態に達するまで約3か月かかるためです。
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投薬と食事の順序を変えない。 ペクシオン錠は空腹時のほうが生物学的利用能が高いため、投与方法を変えないよう求めています。エピレス錠は食餌と共に投与するか、投与後すぐに給餌するか、食後すぐに投与するかのいずれかを指定しています。どちらも「毎回同じにする」ことが前提です。
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尿の処理に気をつける。 ゾニサミドは主に尿中に排泄されます。コンセーブ錠は「本剤を投与された犬の尿中には、ゾニサミドが含まれているので、適切に尿を処理し、処理後には手を洗うこと」と書いています。エピレス錠はさらに踏み込んで、妊娠している可能性のある女性や妊婦、授乳婦は可能な限り尿の処理を行わないこと、他に処理できる者がいない場合は素手で触らないことを求めています。散歩中の排泄処理も、この対象に含まれます。
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通院の間隔には根拠がある。 エピレス錠は投薬中は1〜6週間毎のモニタリングを求め、1回の処方は症状が安定するまで1〜2週間分、安定後は4〜6週間分を目安としています。ペクシオン錠は発作頻度が安定した後も4〜8週間毎の来院が望ましいとしています。コンセーブ錠は血中濃度の測定を、初回投与や用量変更の約1週間後と、その後は6カ月に1回程度としています。頻繁に感じる通院にも、添付文書レベルの根拠があります。
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他に飲んでいる薬を必ず申告する。 エピレス錠の添付文書は、てんかん発作や痙攣が報告されている薬として、ニューキノロン系抗菌薬やノミ・マダニ駆除剤(有効成分:スピノサド)を名指ししています。ノミ・マダニ薬の神経系副作用は既往のある犬で特に気になるところで、予防薬の選択は抗てんかん薬の話と地続きです。血液脳関門に関わるMDR1遺伝子の先天的な欠損を持つコリー犬系統では、アベルメクチン系のフィラリア予防薬(有効成分:イベルメクチン)による神経毒性の報告があり、高感受性を示す犬にエピレス錠を投与する場合は慎重に可否を判断するよう書かれています。
なお、いつ薬を始めるかについては、ACVIMのコンセンサスが目安を挙げています。先に触れた急性反復発作・発作重積のほか、6か月以内に2回以上の発作がある場合、発作のあとの状態が長引いたり、重かったり、普段と違ったりする場合、脳に構造的な病変や既往がある場合などです。これは獣医師が方針を決めるための基準ですが、緊急性の感覚を持つ材料にはなります。
SiPPO Friendsのデイリーケアと服薬記録は、投薬の時刻とフードの変更を残しておく用途に使えます。血中濃度の測定や次の来院までの間に何が変わったかを、記録のまま獣医師に渡せます。
まとめ
- 日本で犬のてんかんに承認されている有効成分は、ゾニサミドとイメピトインの2つだけ。製品はコンセーブ錠・エピレス錠・ペクシオン錠の3種類で、規格を合わせて10件(2026年8月時点)
- フェノバルビタールは動物用医薬品等データベースで、主成分・品名・一般的名称のどれで引いても0件。臭化カリウムのヒットは効能効果が「骨軟症、解熱、鎮痛、消炎」の配合注射剤で、抗てんかん薬ではない
- それでも日本の添付文書は、この2剤を切り替え先として名指しし、「犬に用いられる主な抗てんかん薬」と呼んでいる。薬機法の使用規制がかかる対象動物には、取締規則第24条のとおり犬が列挙されていない
- 同じゾニサミドでも、コンセーブ錠とエピレス錠は対象体重・月齢制限・増量の上限が違う。錠剤を割ってよいかは正反対
- ペクシオン錠は音恐怖症の効能を併せ持ち、てんかん側では発作重積と群発発作を効能から明示的に除外している
- 米国の承認薬はプリミドンのみ、欧州はフェノバルビタール・イメピトイン・臭化カリウム。日本のゾニサミドは欧米に犬用承認薬がなく、国際的な評価は「証拠が不十分」で止まっている。ただしこれは効果の否定ではなく、研究の数と規模の問題
- 家でできることは、急にやめない・フードを変える前に相談する・投薬と食事の順序を変えない・尿の処理に気をつける・通院間隔を守る・併用薬を申告する、の6つ
添付文書は、獣医師のためだけの文書ではありません。誰でも読める場所に置かれていて、処方された薬について何が分かっていて何が分かっていないかが書かれています。診察室で聞きそびれたことがあるなら、まずここを開いてみてください。
この記事は一般的な情報提供を目的としたもので、獣医師による診断や指導に代わるものではありません。 投薬の可否・薬の変更・用量の調整は、必ずかかりつけの獣医師にご相談ください。発作が5分以上続く、短時間に何度も繰り返すといった場合は、緊急の対応が必要です。すぐに動物病院に連絡してください。
よくある質問
- 日本で犬のてんかんに承認されている薬は何ですか?
- ゾニサミドとイメピトインの2成分です。農林水産省の動物用医薬品等データベースで効能効果に「てんかん」を含む製品を検索すると10件がヒットし、内訳はゾニサミドのコンセーブ錠とエピレス錠が7規格、イメピトインのペクシオン錠が3規格です(2026年8月時点)。フェノバルビタールと臭化カリウムには、犬用として承認された製品がありません。
- フェノバルビタールは日本の犬には使えないのですか?
- 犬用として承認された動物用医薬品は存在しません。ただし薬機法が使用を規制する「対象動物」は、動物用医薬品等取締規則第24条で牛・馬・豚・鶏・うずら・蜜蜂・養殖水産動物と定められていて、犬は列挙されていません。実際に何を処方できるかは獣医師の判断になるので、かかりつけで確認してください。
- コンセーブ錠とエピレス錠は同じ薬ですか?
- 有効成分はどちらもゾニサミドですが、添付文書の中身は同じではありません。対象体重の下限はコンセーブが1.25kg以上、エピレスが2.0kg以上です。月齢制限は生後6カ月未満と5ヵ月齢未満、増量の上限は通常10mg/kg/回までと15.0mg/kg/回まで。錠剤を割ってよいかの指示も逆です。
- てんかんの薬を飲んでいる犬のフードを変えても大丈夫ですか?
- 臭化カリウムを併用している場合は注意が必要です。コンセーブ錠の添付文書には、食事の変更による血中臭化カリウム濃度の低下が原因と考えられる群発発作が認められた、と書かれています。IVETFの2015年コンセンサスは、食事を変えるなら最低5日はかけて徐々に行うよう勧めています。変更の前に獣医師に相談してください。
- 薬を飲ませ忘れたときはどうすればいいですか?
- 製品によって指示が違います。ペクシオン錠の添付文書は、投与直後に吐き出した場合は同じ用量を再投与し、完全に飲み込んだ後に吐いた場合や投与を忘れた場合は次回の予定時刻まで待つよう書いています。2回分をまとめないこと、そして自己判断で急にやめないことが共通の注意点です。
出典・参考文献
- 動物用医薬品等データベース(効能効果に「てんかん」を含む承認製品の検索) — 農林水産省 動物医薬品検査所
- 動物用医薬品等データベース コンセーブ錠25mg(ゾニサミド)添付文書 — 農林水産省 動物医薬品検査所
- 動物用医薬品等データベース コンセーブ錠12.5mg(ゾニサミド)添付文書 — 農林水産省 動物医薬品検査所
- 動物用医薬品等データベース エピレス錠10mg(ゾニサミド)添付文書 — 農林水産省 動物医薬品検査所
- 動物用医薬品等データベース エピレス錠80mg(ゾニサミド)添付文書 — 農林水産省 動物医薬品検査所
- 動物用医薬品等データベース ペクシオン錠100mg(イメピトイン)添付文書 — 農林水産省 動物医薬品検査所
- 動物用医薬品等データベース 強力OSM(ヨウ化カリウム・臭化カリウム配合注射剤)添付文書 — 農林水産省 動物医薬品検査所
- International Veterinary Epilepsy Task Force consensus proposal: medical treatment of canine epilepsy in Europe — BMC Veterinary Research(Bhatti SFM, De Risio L, Muñana K, et al. 2015;11:176, doi:10.1186/s12917-015-0464-z)
- 2015 ACVIM Small Animal Consensus Statement on Seizure Management in Dogs — Journal of Veterinary Internal Medicine(Podell M, Volk HA, Berendt M, et al. 2016;30(2):477-490, doi:10.1111/jvim.13841)
- Treatment in canine epilepsy — a systematic review — BMC Veterinary Research(Charalambous M, Brodbelt D, Volk HA. 2014;10:257, doi:10.1186/s12917-014-0257-9)
- 医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(昭和三十五年法律第百四十五号) — e-Gov 法令検索(デジタル庁)
- 動物用医薬品等取締規則(平成十六年農林水産省令第百七号) — e-Gov 法令検索(デジタル庁)
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SiPPO Friends 編集部
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