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犬のノミ・マダニ薬でけいれんは起きる?日本の添付文書4製品を読み比べた

22分で読める
ボーダー柄のニットを着た茶色い巻き毛の小型犬が、リードをつけたまま枯れ草に覆われた土手の斜面で地面のにおいを嗅いでいる

犬のノミ・マダニ予防薬を調べていると、「けいれん」「発作」という言葉に行き当たります。獣医師に月1回の飲み薬をすすめられた直後にこれを読むと、手が止まります。

結論から書きます。神経症状は起こりうると、日本の添付文書に明記されています。これは海外だけの話ではありません。一方でFDAは、この系統を「安全かつ有効」と考えたうえでの注意喚起だと明記しており、使用の中止は求めていません。

この記事では、日本で承認されている4成分の添付文書を実際に読み比べ、FDAの警告と査読論文を突き合わせて、どこまでが分かっていてどこからが分かっていないのかを整理します。編集部として一次資料に当たった記録であり、特定の製品をすすめるものではありません。

犬のノミ・マダニ薬で、けいれんは本当に起きるのか?

起きることがあります。

米国食品医薬品局(FDA)は2018年9月、イソオキサゾリン系と呼ばれる一群のノミ・マダニ薬について安全性情報(Animal Drug Safety Communication)を出しました。あわせて公開されているファクトシートには、こう書かれています。

Isoxazoline products have been associated with neurologic adverse reactions, including muscle tremors, ataxia, and seizures in some dogs and cats

(イソオキサゾリン製品は、一部の犬と猫において筋振戦、運動失調、発作を含む神経学的な有害反応と関連づけられている)

— FDA「Fact Sheet for Pet Owners and Veterinarians about Potential Adverse Events Associated with Isoxazoline Flea and Tick Products」より翻訳

同じファクトシートには、既往のない犬でも起こりうるという記述もあります。「Although most dogs and cats haven't had neurologic adverse reactions, seizures may occur in animals without a prior history(大半の犬と猫に神経学的な有害反応は起きていないが、既往歴のない動物にも発作が起こりうる)」。

ただしFDAは同時に、この系統を「safe and effective for dogs and cats(犬と猫にとって安全かつ有効)」と考えているとも明記しています。注意喚起の目的は使用をやめさせることではなく、飼い主と獣医師が病歴を共有したうえで選べるようにすることです。

日本の添付文書は、何と書いているのか?

ここが、この記事でいちばん伝えたい部分です。

この話題は海外の警告として紹介されることが多いのですが、日本にも公的な記載があります。農林水産省 動物医薬品検査所が運営する動物用医薬品等データベースでは、承認薬の添付文書を誰でも読むことができます。

日本で犬用として承認されているイソオキサゾリン系は4成分です(猫用にはこのほかエサフォキソラネルがあります)。代表的な製品の添付文書を1件ずつ開いたところ、4成分すべてに神経症状の記載がありました。(同じ成分でも製剤によって記載は異なります。たとえばシンパリカ トリオの添付文書には、てんかん既往の慎重投与はあるものの、発現症状としての記載はありません)

成分代表的な製品添付文書の記載
アフォキソラネルネクスガード「イソオキサゾリン系駆除剤の投与後、けいれん、運動失調及び振戦を含む神経症状が認められることがある」
ロチラネルクレデリオ「イソオキサゾリン系薬剤の投与後、けいれん、運動失調及び振戦を含む神経症状が認められることがある」
フルララネルブラベクト錠「非常にまれにけいれんや嗜眠がみられることがある」
サロラネルシンパリカ「幼若犬に誤って過量投与した場合、振戦又は痙攣が認められることがある」

てんかんの既往についても、この4製品はいずれも触れています。ネクスガードとクレデリオは「てんかん発作の病歴のある犬に投与する場合は、投与の是非を慎重に判断すること」、ブラベクト錠は「てんかんの既往歴のある犬への投与に際しては、本剤の有効性及び安全性を十分に勘案した上で、投与の可否を慎重に判断すること」と書いています。

注目したいのは、書きぶりに差があることです。

ネクスガードとクレデリオは「イソオキサゾリン系」というクラス名で書いています。自社製品の話としてではなく、系統全体の注意として提示しているわけです。ブラベクト錠は4製品で唯一、頻度に触れています(「非常にまれに」)。そしてシンパリカは、慎重投与の項でこう補足しています。「てんかん発作の病歴のある犬[本剤は神経伝達物質受容体に作用する]」。理由まで書いているのは4成分でここだけでした。

同じ系統の薬でありながら、メーカーによって説明の深さが違います。1社の添付文書だけを読んで判断すると、受け取る情報量が変わってしまうということです。

なぜ虫にだけ効くはずの薬が、犬の神経に届くのか?

イソオキサゾリン系は、節足動物の神経にあるGABA作動性クロライドチャネルに結合して神経の信号伝達を妨げ、麻痺させて死に至らせることで効きます。狙いは虫の神経であって、犬の神経ではありません。

では、なぜ犬に神経症状が出ることがあるのか。ここは、思っていたより単純ではありませんでした。

ロチラネルを調べたRufenerらの2017年の研究(Parasites & Vectors)が、その手がかりになります。ショウジョウバエの受容体に対する50%阻害濃度(IC50)は23.84 ± 1.87 nMでした。一方、イヌのGABA-A受容体(α1β2γ2)では、試験した最高濃度である10 µM(=10,000 nM)まで作用が見られていません。それ以上の濃度は測られていないので、「効かない」ではなく「試した範囲では効かなかった」が正確なところです。それでも虫と犬とで桁が違う。この選択性の高さが、この系統の安全域の根拠とされてきました。なお使われた受容体はビーグル由来のクローンで、著者らは他の犬種や猫での検証が今後必要だと書いています。

ところが2025年にParasites & Vectors誌に出た比較研究は、別の絵を示しています。ヒトとイヌのGABA受容体をアフリカツメガエルの卵母細胞に発現させ、4成分を並べて測ったものです。

Sarolaner, afoxolaner and fluralaner exhibited partial to high inhibition of human and canine GABARs, with fluralaner showing the lowest half-maximal inhibitory concentration (IC50) values (1.9–13 µM). In contrast, lotilaner had little or no inhibitory effect, with IC50 values > 30 µM […]

(サロラネル、アフォキソラネル、フルララネルは、ヒトおよびイヌのGABA受容体に対して部分的から高度の阻害を示し、フルララネルが最も低いIC50値〈1.9〜13 µM〉を示した。対照的に、ロチラネルはほとんどまたは全く阻害作用を示さず、IC50値はいずれも30 µM超であった)

— Parasites & Vectors, 2025 より翻訳

つまり、4成分のうち3成分は、マイクロモル濃度であれば犬のGABA受容体を実際に阻害します。「虫にしか効かない」という説明は、厳密には正確ではありません。

ただしこの論文の結論は、そこで止まりません。著者らは「this study suggests that direct inhibition of canine GABARs may not be the primary cause(イヌのGABA受容体の直接的な阻害が主因ではない可能性を、本研究は示唆する)」と述べ、さらに「a direct correlation with documented cases of adverse events remains difficult(報告されている有害事象との直接的な相関を導くことは依然として困難である)」と付け加えています。

試験管の中で受容体が阻害されることと、実際の犬にけいれんが起きることは、まだ線でつながっていません。受容体の数字だけを見て製品の危険度を並べることはできない、というのが2025年時点の到達点です。

ここで、読者に開示しておくべきことがあります。 ここまで引用した2本の研究は、どちらも Elanco Animal Health(および同社が買収した Novartis Animal Health)が資金を提供し、著者に同社の従業員が含まれています。そして Elanco は、この2本で「ほぼ無作用」と出たロチラネルを、クレデリオという商品名で販売している会社です。査読を経た論文であり、実験手法そのものに問題があるという話ではありません。2025年の論文は利益相反の項で、測定を担当した別会社には物質がコード化された状態で渡され、結果を検討するまでどれがどの薬剤か分からない盲検で実施したとも述べています(ただしその会社に所属する2名は本論文の共著者で、うち1名は2017年の論文の筆頭著者でもあります)。ただ、成分間の差を示すデータの出どころが、その差で有利になる側の企業であるという事実は、読者が知ったうえで受け取るべきものだと考えます。この記事は、この2本を根拠に特定の製品を推奨しません。

なお2025年の論文は、ロチラネルについて「MDR1変異を持つ犬種での試験では神経症状が認められず、高い安全性プロファイルが確認されている」とも述べています。上と同じ理由で、この記述も出どころを踏まえて読む必要があります。

そして、こうした試験管の差は、日本の承認ラベルには反映されていません。in vitroでほぼ無作用だったロチラネル(クレデリオ)にも、他の3成分と同じ神経症状の注意書きが載っています。 実験室の成績と、規制当局が求める注意書きは、別のものだということです。

どのくらいの量から起きるのか?

用量と神経症状の関係について、日本の添付文書で具体的な数字を出しているのはシンパリカだけでした。

対象動物安全性試験の条件はこうです。8週齢の犬 各8頭に、4 mg/kg(最大実投与量)・12 mg/kg(3倍量)・20 mg/kg(5倍量)を1か月間隔で10回経口投与しています。結果は、12 mg/kg群の3頭と20 mg/kg群の2頭に振戦、20 mg/kg群の1頭に痙攣が一過性に認められた、というものです。最大実投与量の群についてこれらの記載はありません。そして添付文書は続けてこう書いています。「これらはいずれも無処置で回復し、犬が6ヵ月齢以上となる5回目投与以降では認められなかった」。症状が出た犬も処置なしで戻り、成長とともに出なくなったということです。

読み取れるのは、最大実投与量では振戦も痙攣も出ていないこと、そしてちょうど3倍にあたる12 mg/kgから振戦が現れ、5倍で痙攣まで届いていることです。裏を返せば、誤って多く飲ませてしまう事故が、この系統ではリスクになりうるということでもあります。多頭飼育で体重の違う犬に取り違えて与える、床に落ちた1錠を別の犬が拾い食いする——といった場面は、想像しにくいものではありません。

ただしこれは1成分の1試験の結果です。他の3成分に同じ用量反応があてはまるとは限りません。

FDAが挙げる11製品と、日本で買える薬はどう違うのか?

FDAのファクトシートは、対象を11製品として列挙しています。Bravecto(錠剤・スポット・Plus・1-month)、Credelio、Nexgard(通常・Plus・Combo)、Simparica、Simparica Trio、Revolution Plusです。

日本の承認製品は、これと一致しません。動物用医薬品等データベースで成分名から引くと、日本にはブラベクト365やクレデリオクワトロといった、FDAのリストにない製品があります。ブラベクト365は経口剤ではなく、12か月持続する皮下注射剤です(添付文書の用法は、粉末注射剤を懸濁用液に懸濁し体重1 kg当たり0.1 mLを皮下注射)。

この製品の添付文書には、もうひとつ注目すべき点があります。副作用を頻度別の表で示しており、筋振戦・運動失調・痙攣を「0.01%未満」の欄に置いているのです。日本の添付文書で神経症状の頻度を数値で示しているのは、確認した範囲ではここだけでした。逆にNexgard ComboやBravecto Plusは猫用で、犬の話に混ぜるものではありません。

紛らわしい点を2つ補足します。

ひとつはフロントプロです。アフォキソラネル製剤で、添付文書にはネクスガードと同じ神経症状の記載があります。名前の似ているフロントラインは有効成分がフィプロニルで、イソオキサゾリン系ではありません。名前で判断すると取り違えます。

もうひとつはエグゾルトです。成分名でフルララネルを検索するとヒットしますが、効能・効果は「鶏に寄生するワクモの駆除」で、犬用の薬ではありません。

海外の記事で製品名を見かけたときは、日本で同じ名前・同じ中身で売られているとは限らない、と考えたほうが安全です。

実際に、どれくらいの頻度で起きているのか?

実は、日本にも公開されている数字があります。しかも海外より細かい形で。

動物用医薬品等データベースの製品ページには、添付文書の下に「副作用情報」の表が付いています。ここには報告年月日・動物種・品種・性・転帰が並び、各行から個別の症例ページに入れます。犬用のイソオキサゾリン系45規格を数えたところ、報告は合計178件でした(2026年8月時点)。記事で取り上げた4製品では、ブラベクト錠250 mgが12件、シンパリカ40が5件、ネクスガード68とクレデリオ錠Mが各2件です。

症例ページの情報量は、FDAの集計値とは性質が違います。古い様式のページでは、犬種・年齢・体重・既往歴・投与目的・併用薬・症状の経過・転帰、そして獣医師と製造販売業者それぞれの意見まで読めます(新しい様式では既往歴・投与目的・併用薬の欄がありません)。転帰には回復した例も、重篤な結果に至った例も含まれます。

ただし、この178という数字から発生率を出すことはできません。分母が公開されていないからです。何頭に投与されたうちの178件なのかが分からなければ、率は計算できません。

もうひとつ、数字の性質にも注意が要ります。個別の症例ページを開くと、「効能・効果」欄が適応外使用となっているものや、因果関係の判定が「不明」のものが含まれています。報告された=薬が原因、ではありません。同じ動物医薬品検査所が運営する別ページ(動物用医薬品副作用情報 製品名別検索)も、同ページに掲載する副作用情報について「掲載している副作用情報は、入手した情報をそのままとりまとめたもので、因果関係が明らかでないものや適用外使用(承認外使用)による副作用等も含まれています」と注記しています。加えて、この種の自発報告制度には、軽い症状ほど報告されにくいという偏りが一般に伴います。

なお、その「動物用医薬品副作用情報 製品名別検索」のページには、イソオキサゾリン系の製品は収載されていませんでした。並んでいるのはフロントラインやプログラムといった旧世代の薬です。国内データを探すなら、そちらではなく製品ページの副作用情報を見ることになります。

海外に目を向けると、症例をまとめた報告があります。英国とオランダの中毒情報センターのデータベースを解析したBatesらの2024年の論文(Veterinary Record)は、次のように報告しています。

There were 22 cases with and 57 cases without outcome information, mostly involving fluralaner or sarolaner. (中略) In all cases with outcome information, the animals recovered.

(転帰情報のある症例は22例、転帰情報のない症例は57例で、大半はフルララネルまたはサロラネルに関するものだった。転帰情報のあるすべての症例で、動物は回復した)

— Bates N, Dijkman MA, Edwards JN.「Neurological adverse effects of isoxazoline exposure in cats and dogs」(Veterinary Record, 2024)より翻訳

「全例回復」は心強い数字ですが、この論文はそのまま一般化することを自ら戒めています。限界の項に「Cases discussed with poison centres tend to involve more severe signs(中毒情報センターに相談される症例は、より重い症状を伴う傾向がある)」とあり、そもそも中毒センターに問い合わせが行くほどの症例が母集団です。加えて、転帰を追えなかった57例が別にあります。回復例が確認されている、という以上のことは読み取れません。

もうひとつ、この論文が指摘している点は実用的です。犬では経口の治療用量でも過量投与でも神経症状が起きていた、と結果に書かれています。「量を守っていれば起きない」とは言えない、ということです。

てんかんの既往がある犬は、どう考えればいいのか?

確認した4製品の添付文書は、いずれもてんかんの既往に触れています。ただし、いずれも禁忌ではありません。表現は「投与の是非を慎重に判断すること」であり、判断を獣医師に委ねる形になっています。

これは「使ってはいけない」でも「気にしなくていい」でもない、中間の書き方です。マダニが媒介する病気にはSFTS(重症熱性血小板減少症候群)などがあり、予防しないことにもリスクがあります。てんかんの既往という一点だけで予防そのものを諦めるのは、天秤の片側しか見ていないことになります。

飼い主にできるのは、判断の材料を獣医師に渡すことです。

  • 過去のけいれん・発作の有無と、そのときの状況
  • 過去にイソオキサゾリン系を使ったことがあるか、そのとき異変はあったか
  • 現在飲んでいる薬(ブラベクト錠の添付文書は、血漿蛋白結合率が高く、同様に結合率の高い他剤と併用すると互いの遊離型濃度が変わりうると注意しています)
  • スポットオン(滴下)でも構わないか、経口でなければならない事情があるか

添付文書には、既往と無関係な使用制限も書かれています。ブラベクト錠の場合、8週齢未満の子犬と体重2 kg未満の犬には投与しないこと、繁殖に用いる犬・妊娠中・授乳中の犬は国内で実施した臨床試験の症例に含まれておらず安全性が確認されていないこと、などです。該当するなら、これも伝える情報になります。

「オールインワン」の配合剤には、もうひとつの注意点がある

近年は、ノミ・マダニに加えてフィラリアや消化管内寄生虫まで1錠でカバーする配合剤が増えました。ネクスガード スペクトラ、シンパリカ トリオ、クレデリオ プラス、クレデリオ クワトロなどです。

動物用医薬品等データベースで成分から引くと、これらの配合相手が分かります。ネクスガード スペクトラとクレデリオ プラスにはミルベマイシンオキシムが、シンパリカ トリオとクレデリオ クワトロにはモキシデクチンが含まれています。どちらもマクロサイクリックラクトンと呼ばれる系統です。

ここで、イソオキサゾリンとは別の話が入ってきます。

犬にはMDR1(ABCB1)遺伝子の変異が知られています。この遺伝子が作るP糖タンパクを、GeyerとJankoの総説(Current Pharmaceutical Biotechnology, 2012)は「ATP-driven efflux pump」と表現しています。薬を細胞や組織から汲み出すポンプで、とりわけ血液脳関門で薬が脳に入るのを制限する働きをします。変異があるとこのポンプが働かず、マクロサイクリックラクトンへの感受性が高くなります。同総説はこの変異を持つ犬種を13挙げています。コリー、シェットランド・シープドッグ、オーストラリアン・シェパード、ボーダー・コリー、ジャーマン・シェパード、オールド・イングリッシュ・シープドッグなどです。

そして、先ほどの2025年の論文が結論で触れているのも、この遺伝子でした。神経学的な有害事象が報告されているのは「particularly in breeds with the multidrug resistance 1 (MDR1) gene mutation(とりわけMDR1遺伝子変異を持つ犬種において)」だ、という記述です。

誤解のないように補足すると、フィラリア予防に用いる量のマクロサイクリックラクトンは、MDR1変異犬でも一般に問題にならないとされています。神経毒性が問題になるのは、疥癬やニキビダニの治療で使うような高用量です。ここで言いたいのは危険性ではなく、牧羊犬種を飼っているなら、配合剤を選ぶ前にその話を獣医師とする理由がひとつ増える、ということです。MDR1変異は遺伝子検査で調べられます。

投与のあと、何を見ていればいいのか

「投与後◯時間は観察すること」という指示は、確認した4成分の添付文書のいずれにもありませんでした。ですから、ここは添付文書から読み取れる範囲で組み立てます。

ブラベクト錠には、投与後6時間以内に嘔吐して薬を完全または一部排出した場合は再投与することという記載があります。少なくとも最初の6時間は、吐き戻していないかを確認できる状態にしておく意味があります。

見るべき症状は、添付文書とFDAが挙げているものが一致しています。振戦(体の震え)、運動失調(ふらつき、まっすぐ歩けない)、けいれんの3つです。ブラベクト錠はこれに嗜眠(ぐったりして反応が鈍い)を加えています。消化器症状(下痢、嘔吐、食欲不振、流涎)も、ブラベクト錠が「ときに」みられるとしています。

現実的な組み立て方はこうなります。

  1. 初めて使う薬は、翌日に予定がない日に与える。何かあったときに動物病院に行ける時間帯を選ぶ
  2. 投与後6時間は、吐き戻しに気づける場所で過ごす。これはブラベクト錠の記載を参考にした目安です。留守番中に吐いていると、再投与の判断ができません
  3. 異変が出たら、製品名と投与時刻をメモしてから受診する。獣医師が最初に知りたいのはこの2点です
  4. 当日なにもなくても、翌日以降の変化を見る。Batesらの論文は、症状が出るまでの間隔が製品情報に十分書かれていないことを指摘しています。当日何もなかったからといって、それで終わりとは限りません

SiPPO Friendsのデイリーケアと服薬記録は、この「製品名と投与時刻」を残しておく用途に使えます。次の予防のタイミングも、前回いつ与えたかが残っていれば迷いません。ブラベクト錠の添付文書は「本剤をノミ及びマダニ駆除の目的に反復投与する場合は12週間に1回を超えないようにすること」とし、さらに「投与後約3か月以内に体重がおよそ2倍となるような成長期の犬に反復投与する場合には、寄生リスクを考慮して8週間に1回を超えないようにすること」と続けています。子犬では間隔が変わるということです。記録が残っていれば、この判断を獣医師と共有できます。

まとめ

  • 日本で犬用として承認されているイソオキサゾリン系4成分(フルララネル・アフォキソラネル・サロラネル・ロチラネル)について、代表的な製品の添付文書にはいずれも神経症状の記載がある。FDAだけの話ではない(同じ成分でも製剤によって記載は異なる)
  • ただし記載の温度差は大きい。読み比べた4製品で頻度に触れているのはブラベクト錠のみ(「非常にまれに」)。頻度を数値で示しているのは、日本の添付文書ではブラベクト365の「0.01%未満」だけだった。機序に触れているのはシンパリカだけ
  • 「虫にしか効かない」は厳密には正確でない。2025年の研究では4成分中3成分が犬のGABA受容体をµM濃度で阻害した。ただし著者自身が、それが臨床の有害事象の主因ではない可能性を示唆している
  • 成分間の差を示した研究2本は、いずれもその差で有利になるロチラネルの販売元(Elanco)の資金によるものだった
  • 用量の目安を出しているのはシンパリカのみ。最大実投与量のちょうど3倍で振戦、5倍で痙攣が一過性に見られたが、いずれも無処置で回復し5回目投与以降は認められなかった
  • 日本の副作用報告は製品ページで公開されている(犬用45規格で計178件、2026年8月時点)。ただし分母が非公開なので発生率は出せず、因果関係不明の例や適用外使用も含まれる
  • てんかんの既往は禁忌ではなく「慎重に判断」。判断材料を獣医師に渡すのが飼い主の役割
  • 牧羊犬種で配合剤を検討するなら、MDR1遺伝子変異の話を獣医師とする価値がある

この記事は特定の製品を推奨も否定もしません。判断するのは、犬の病歴を知っている獣医師と飼い主です。ここで示したのは、その会話に持っていける材料です。

この記事は一般的な情報提供を目的としたもので、獣医師による診断や指導に代わるものではありません。 投薬の可否・製品の選択・既往歴のある犬への対応は、必ずかかりつけの獣医師にご相談ください。愛犬に神経症状などの異変が見られた場合は、自己判断で様子を見ず、速やかに動物病院を受診してください。

よくある質問

犬のノミ・マダニ薬でけいれんは本当に起きますか?
起きることがあります。犬用として承認されているイソオキサゾリン系4成分について代表的な製品の添付文書を確認したところ、いずれにもけいれん・運動失調・振戦といった神経症状の記載がありました。ただし頻度は低く、ブラベクト錠の添付文書は「非常にまれに」と表現しています。
てんかんの既往がある犬に、経口のノミ・マダニ薬は使えますか?
使えないと決まっているわけではありません。日本の添付文書はどれも「投与の是非を慎重に判断すること」と書いており、禁忌ではなく獣医師の判断に委ねる形です。既往歴は必ず獣医師に申告してください。
イソオキサゾリン系の薬は、どの製品が該当しますか?
犬用としてはフルララネル(ブラベクト)、アフォキソラネル(ネクスガード、フロントプロ)、サロラネル(シンパリカ)、ロチラネル(クレデリオ)の4成分です(猫用にはエサフォキソラネルもあります)。スペクトラ・トリオ・プラス・クワトロといった配合剤も同じ系統を含みます。
日本にノミ・マダニ薬の副作用の報告件数は公開されていますか?
公開されています。動物用医薬品等データベースの製品ページに副作用情報の表があり、犬用イソオキサゾリン系45規格で合計178件の報告が閲覧できます(2026年8月時点)。ただし投与された総頭数が公開されていないため、発生率は算出できません。
薬を飲ませたあと、どれくらい様子を見ればいいですか?
決まった時間は添付文書に書かれていません。ただしブラベクト錠は投与後6時間以内に吐き戻した場合は再投与するよう指示しており、最初の数時間は目の届く場所に置くのが現実的です。震え・ふらつき・けいれんが出たらすぐ受診してください。

出典・参考文献

  1. Fact Sheet for Pet Owners and Veterinarians about Potential Adverse Events Associated with Isoxazoline Flea and Tick ProductsU.S. Food and Drug Administration (FDA)(Content current as of 08/08/2023)
  2. 動物用医薬品等データベース ネクスガード 68(アフォキソラネル)添付文書農林水産省 動物医薬品検査所
  3. 動物用医薬品等データベース ブラベクト錠 250mg(フルララネル)添付文書農林水産省 動物医薬品検査所
  4. 動物用医薬品等データベース シンパリカ 40(サロラネル)添付文書農林水産省 動物医薬品検査所
  5. 動物用医薬品等データベース クレデリオ錠 M(ロチラネル)添付文書農林水産省 動物医薬品検査所
  6. Neurological adverse effects of isoxazoline exposure in cats and dogsVeterinary Record(Bates N, Dijkman MA, Edwards JN. 2024;194(12):e4149, doi:10.1002/vetr.4149)
  7. Comparative analysis of isoxazoline activity on human and canine GABA receptors expressed in Xenopus oocytesParasites & Vectors(Sager H, Sarr A, Kuntz E, Rufener L. 2025;18:213, doi:10.1186/s13071-025-06847-3)
  8. The novel isoxazoline ectoparasiticide lotilaner (Credelio™): a non-competitive antagonist specific to invertebrates γ-aminobutyric acid-gated chloride channels (GABACls)Parasites & Vectors(Rufener L, Danelli V, Bertrand D, Sager H. 2017, doi:10.1186/s13071-017-2470-4)
  9. Treatment of MDR1 Mutant Dogs with Macrocyclic LactonesCurrent Pharmaceutical Biotechnology(Geyer J, Janko C. 2012;13(6):969-986)
  10. Animal Drug Safety Communication: FDA Alerts Pet Owners and Veterinarians About Potential for Neurologic Adverse Events Associated with Certain Flea and Tick ProductsU.S. Food and Drug Administration (FDA)(2018-09-20)
  11. 動物用医薬品副作用情報 製品名別検索農林水産省 動物医薬品検査所
  12. 動物用医薬品等データベース ネクスガード スペクトラ 45(アフォキソラネル・ミルベマイシンオキシム)添付文書農林水産省 動物医薬品検査所
  13. 動物用医薬品等データベース シンパリカ トリオ M(サロラネル・モキシデクチン・ピランテル)添付文書農林水産省 動物医薬品検査所
  14. 動物用医薬品等データベース クレデリオプラス錠 M(ロチラネル・ミルベマイシンオキシム)添付文書農林水産省 動物医薬品検査所
  15. 動物用医薬品等データベース クレデリオクワトロ錠 M(ロチラネル・モキシデクチン等)添付文書農林水産省 動物医薬品検査所
  16. 動物用医薬品等データベース ブラベクト365(フルララネル注射剤)添付文書農林水産省 動物医薬品検査所
  17. 動物用医薬品等データベース フロントプロ M(アフォキソラネル)添付文書農林水産省 動物医薬品検査所
  18. 動物用医薬品等データベース フロントライン スポットオン ドッグ(フィプロニル)添付文書農林水産省 動物医薬品検査所
  19. 動物用医薬品等データベース エグゾルト(フルララネル・鶏用)添付文書農林水産省 動物医薬品検査所

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SiPPO Friends 編集部

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