犬の秋の換毛期|抜け毛の合図は気温と日の長さ。抜けないプードル系は毛玉に注意

犬の抜け毛は秋にひどくなる、とよく言われます。わが家の茶々丸(愛犬・キャバプー、9kg)は、季節で抜け毛が増えた実感がほとんどありません。キャバプーは毛が抜けにくいらしい、というのがこの子を迎えた決め手だったので、そこは狙いどおりでした。
犬の換毛期は春と秋の年2回が基本で、AKC によると1シーズンは数週間から2か月ほど続きます。秋に抜けるのは、夏毛の毛包が休止期に入り、冬に向けた毛に入れ替わるためです。 一方で、プードル系のように抜けにくい犬には、別の課題があります。毛玉です。
茶々丸の毛玉は、気を抜くと脇とお腹にできています。抜ける犬と抜けない犬で、秋のケアは何が違うのか。毛が生え替わる仕組みから調べました。
犬の換毛期はいつ?秋は何が起きているのか
春と秋の年2回です。AKC は、季節で抜ける犬では春と秋にいちばん多く抜けるとし、そのシーズンは通常数週間から2か月ほど続くと説明しています。時期は犬種や毛のタイプ、気温や日照によって前後します。
秋の換毛では、夏の毛が抜けて、寒さに備える毛に入れ替わります。まとまって抜けるのは、主にダブルコートの犬です。ダブルコートは、硬くて長い上毛(トップコート)の下に、柔らかく密な下毛(アンダーコート)を持つ二層の毛のことで、AKC によると、季節の変わり目に多く抜けるのは下毛のほうです。AKC がダブルコートの例に挙げる犬種には、ラブラドール・レトリーバーやウェルシュ・コーギー、ポメラニアンなどがあります。
換毛のスイッチは気温?それとも日の長さ?
どちらも関わっています。Merck 獣医マニュアルは、毛の成長を左右する要因として栄養・ホルモン・光周期(日の長さ)を挙げ、こう書いています。
Animals normally shed their hair in response to changes in temperature and photoperiod; most animals shed hair in early spring and early autumn. (動物は通常、気温と光周期の変化に応じて毛が抜け替わる。多くの動物は早春と初秋に毛が抜ける)
犬の毛は、伸びる時期(成長期)、移行の時期、休む時期(休止期)をくり返しています。1977年の古典的な研究では、雄のビーグル9頭の背中の皮膚を季節ごとに調べ、コーミングで抜け毛も集めました(Al-Bagdadi ら、American Journal of Veterinary Research)。休止期の毛包が最も多かったのは秋と春です。抜け毛のピークも、同じ時期に重なっていました。
秋の抜け毛は、夏毛がいっせいに勤務を終えて、冬毛に席を譲るシフト交代のようなものです。
ただし、犬で日の長さだけを変えて換毛を確かめた実験は、今回調べた範囲では見つかりませんでした。「日の長さが主な原因だと実証されている」とまでは言えず、季節の観察と獣医学の教科書の説明が一致している、という段階です。
ちなみに、犬の毛穴は1つから何本もの毛が出ています。Merck 獣医マニュアルによると、犬の毛包は1つの毛穴から中心の毛1本と、それを囲む3〜15本の細い毛が一緒に出ている複合毛包です。
室内犬が1年中少しずつ抜けるのはなぜ?
照明とエアコンで、季節の合図が届きにくくなるからだと考えられています。AKC は、人工照明と一定の室温にいつもさらされている室内犬では、1年を通じて少しずつ抜けることがあると説明しています。ただし AKC は、1年中少しずつ抜ける犬でも、季節の抜け替わりがはっきり出る犬は多いとも書いています。
Some dogs shed lightly throughout the year, especially indoor dogs with consistent exposure to artificial lighting and temperature. (1年を通じて少しずつ抜ける犬もいる。人工照明と一定の室温に常にさらされている室内犬では特にそうだ)
室内で飼われている犬で、毛が伸びる速さに季節の差が見られなかった研究もあります。室内で飼われているラブラドール・レトリーバー37頭を調べた研究では、手術で刈った毛が元の長さに戻るまでの期間は13.6〜15.4週で、季節による差はありませんでした(Diaz ら、Veterinary Dermatology、2004)。この研究が測ったのは毛が伸びる速さで、抜け毛の量ではありません。それでも、室内の犬では毛の季節の差が出にくい、という見方と矛盾しない結果です。
日本の暑い季節も関係するかもしれません。AKC に登場するプロのトリマーは、ダブルコートの多くは北の寒い気候向けで、寒い地域なら下毛が抜けるのは春と秋だけでも、暖かい地域では年4回、あるいは1年中抜けることがあると話しています。
「秋なのにあまり抜けない」「春でもないのに抜ける」だけなら、それ自体は異常ではありません。気になるときは、後で書くように皮膚の状態とあわせて見てください。
プードル系に換毛期はない?抜けない犬の毛はどうなっているのか
季節にまとまって抜けることが起きにくい毛質です。日本では、この「抜けない側」の犬がかなり多くいます。ジャパンケネルクラブ(JKC)の2025年の犬種別犬籍登録頭数では、プードルが69,342頭で1位でした(総登録302,530頭・141犬種)。
理由は毛包のシフト表にあります。Welle と Wiener のレビュー論文(Toxicologic Pathology、2016)によると、プードルでは毛包の約98%が成長期にあります。多くの犬種では、休止期の毛包が最大で34%を占めるのと対照的です。ほぼ全員が伸ばし続ける勤務体制なので、抜け毛は少ない代わりに毛はどんどん伸びます。AKC もプードルの毛を、人の髪のように伸び続ける毛だと説明しています。
伸び続ける毛のツケは、抜け毛ではなく別の形で回ってきます。もつれ、毛玉、定期的なトリミングです。VCA Animal Hospitals は、長い毛や巻き毛の犬には、もつれや毛玉を防ぐために毎日のブラッシングが必要だとし、特にもつれやすい場所として耳のまわり、脇、脚の後ろ側を挙げています。
茶々丸はプードルとキャバリアのミックスで、抜け毛の少なさはたしかに実感しています。季節で量が変わった感じもありません。そのぶん、毛玉は脇とお腹にできます。VCA の挙げる脇はそのまま当たっていました。見つけたら、痛くないように手でほぐします。無理なときはハサミで切っています。ただ、これは真似しないでください。VCA Animal Hospitals は、毛玉を取るならハサミではなくバリカンを使うよう書いていて、ひどいもつれはトリマーか獣医師に任せることを強く勧めています。調べてみて、うちのやり方が危ない側だったと知りました。毛が抜けない犬を選んだら、毛玉ができる犬がついてきたわけです。
トリミングは、お店に3か月に1回ほどお願いしています。AKC はスタンダード・プードルのトリミングの目安を、4〜8週ごとくらいとしています。うちは、その目安よりだいぶ間が空いています。あいだの手入れは、家でブラシでとかすくらいです。
秋のブラッシング、頻度と道具はどう選ぶ?
頻度の目安は毛のタイプで変わります。VCA は、長い毛・絹のような毛・巻き毛の犬は毎日、短毛の犬はそれより少なくてよいとしています。抜け毛の多い犬について、AKC は換毛のピークには週数回から毎日のブラッシングが必要になることがあるとしています。
道具は、VCA の整理がわかりやすいです。
| 毛のタイプ | VCA が挙げる道具 |
|---|---|
| プードルのような巻き毛で抜けにくい毛 | スリッカーブラシ |
| 中くらいの長さの毛、下毛が少ない毛 | コーム、硬めの毛のブラシ |
| なめらかな短毛(ポインター、ボクサーなど) | 毛の短いブラシ、グルーミンググローブ |
| 長毛(コリーなど) | 歯の長い金属のコームやブラシ |
| 下毛の抜け毛 | デシェディングブラシ(上毛を傷めずに死んだ下毛を取る道具) |
ダブルコートの犬について、AKC はスリッカーブラシでとかしたあとにコームで仕上げる手入れを、少なくとも週1回としています。力加減は、自分の髪をとかすのと同じで、皮膚ではなく毛をとかすように、というのが AKC の説明です。
抜け毛対策に丸刈りにする、という発想は勧められていません。AKC は、剃っても抜け毛はなくならず、上毛を傷めて皮膚トラブルや日焼けの可能性を上げると警告しています。
わが家はスリッカーと、ラバーのブラシを使っています。頻度は、正直に言うと決まっていません。気づいたときにやる感じです。毎日やるべきだとは思っていて、サボると毛玉になって返ってきます。雨の日やシャンプーのあとは、乾いたタオルでほぼ乾かしてからドライヤーをかけています。
ブラッシングは皮膚チェックの機会にできる?
できます。むしろ、毛をかき分けて地肌まで見るのは、日々の世話の中ではブラッシングのときくらいです。VCA Animal Hospitals はこう書いています。
If you regularly check your dog's coat and skin, you will also have a better chance of detecting any unusual lumps or bumps, parasites such as fleas and ticks, or areas of sensitivity (被毛と皮膚を定期的に見ていれば、いつもと違うしこりやノミ・マダニなどの寄生虫、触ると嫌がる場所にも気づきやすくなる)
見るのは、赤み、フケ、ベタつき、かゆがっている場所、しこりです。
私が皮膚を見るのは、たまに、それも今のところほぼ陰部だけです。この夏、茶々丸が外陰部を舐めていたのに、なんとなく舐めているなと思いながら1週間ほど気にしていなかったことがありました(その経緯は陰部を舐めて赤いときの記事に書いています)。トリマーさんから皮膚のことで何か言われたこともありません。毛玉のできる脇とお腹は、毛はとかしていても、地肌までは見ていませんでした。この秋は、ブラッシングのついでに、その2か所の地肌も見るつもりです。
体型のチェックとまとめてやるなら、自宅でできる BCS(体型)チェックとあわせて、月に1回の点検にしてしまう方法もあります。
その抜け毛、換毛期じゃないかも?受診を考えるサインは?
AKC は、はげた部分や皮膚の炎症、急な抜け毛の増加を伴うなら、抜け毛が多すぎる可能性があるとしています。季節の抜け替わりと思って見過ごさないほうがいいのは、こういうときです。
Merck 獣医マニュアルによると、甲状腺機能低下症の犬の約3分の2に、かゆみを伴わない毛の薄まりや脱毛(多くは左右対称)が見られます。場所は、お腹側や体の横、太ももの後ろ、しっぽの背中側、首の下側、鼻筋などです。毛が乾いてパサつく、抜け毛が多い、毛の生え戻りが遅い、といった変化は早い段階のサインとされています。AKC も、甲状腺機能低下症やアレルギーなどが毛や皮膚に影響することがあるとして、毛が薄くなる、はげた部分ができる、皮膚が荒れる、といった変化に注意するよう書いています。
目安をまとめます。
- 地肌が透けて見える部分がある
- 特定の場所だけ、または左右対称に毛が薄い
- フケ、赤み、ベタつきがある
- かゆがっている
- 毛がパサついて折れる
どれかが重なるなら、換毛期のせいと決めずに動物病院に相談してください。PetMD は、水を飲む量やおしっこが増えた、体重が増えた、皮膚に寄生虫が見える、ひどくかゆがる、といった症状が抜け毛と一緒にあるなら受診するよう勧めています。
この記事は一般的な情報提供を目的としており、獣医師の診断に代わるものではありません。愛犬の抜け毛や皮膚に不安がある場合は、かかりつけの獣医師にご相談ください。
まとめ
- 換毛期は春と秋の年2回。1シーズンは数週間から2か月ほど(AKC)
- 秋に抜けるのは、夏毛の毛包が休止期に入り、冬の毛に入れ替わるため。合図は気温と日の長さ
- 室内犬では季節の区切りがぼやけ、1年中少しずつ抜けることがある。それ自体は異常ではない
- プードル系は抜けにくい代わりに毛が伸び続ける。課題は抜け毛ではなく、もつれと毛玉
- ブラッシングは、地肌を見るいちばんの機会
- 左右対称に薄い、地肌が見える、かゆみや皮膚の変化を伴う抜け毛は、換毛ではないかもしれない
気づいたらやる、を続けていると、気づかない日がそのまま何日も続きます。SiPPO Friends のデイリーケアには「ブラッシング」の項目があり、やった日に印をつけられます。この秋は、茶々丸のブラッシングの日をアプリに残して、どれくらい間が空いたら脇に毛玉ができるのかを数えてみるつもりです。
よくある質問
- 犬の換毛期はいつですか?
- 春と秋の年2回が基本です。AKC によると、換毛のシーズンは通常数週間から2か月ほど続き、時期は犬種や毛のタイプ、気温や日照によって前後します。室内で暮らす犬では季節の区切りがはっきりせず、1年を通じて少しずつ抜けることもあります。
- なぜ秋に抜け毛が増えるのですか?
- 夏毛の毛包が休止期に入り、冬に向けて毛が入れ替わるためです。ビーグルを1年を通じて調べた研究では、休止期の毛包が最も多いのは秋と春で、抜け毛のピークも同じ時期でした。Merck 獣医マニュアルは、動物は気温と光周期(日の長さ)の変化に応じて毛が抜けると説明しています。
- トイプードルに換毛期はありますか?
- 季節にまとまって大量に抜けることは起きにくい毛質です。Welle と Wiener のレビュー論文によると、プードルでは毛包の約98%が成長期にあります。抜ける代わりに毛が伸び続けるので、もつれや毛玉を防ぐブラッシングと定期的なトリミングが必要になります。
- 換毛期のブラッシングは毎日必要ですか?
- 毛のタイプによります。AKC は、抜け毛の多い犬では換毛のピークに週数回から毎日のブラッシングが必要になることがあるとしています。VCA Animal Hospitals は、長い毛や巻き毛の犬にはもつれを防ぐため毎日のブラッシングを勧め、短毛の犬はそれより少なくてよいとしています。
- 病気による抜け毛と換毛期の見分け方は?
- AKC は、はげた部分や皮膚の炎症、急な抜け毛の増加を伴うなら、ただの抜け毛ではない可能性があるとしています。毛が左右対称に薄くなる、地肌が見える、フケや赤み、かゆみを伴う場合も受診を考えてください。Merck 獣医マニュアルによると、甲状腺機能低下症の犬の約3分の2に、かゆみを伴わない毛の薄まりや脱毛(多くは左右対称)が見られます。
出典・参考文献
- Hair follicle cycle and shedding in male beagle dogs — American Journal of Veterinary Research(Al-Bagdadi FA ほか, 1977;38(5):611-616)
- The Hair Follicle: A Comparative Review of Canine Hair Follicle Anatomy and Physiology — Toxicologic Pathology(Welle MM, Wiener DJ, 2016;44(4):564-574)
- An analysis of canine hair re-growth after clipping for a surgical procedure — Veterinary Dermatology(Diaz SF ほか, 2004;15(1):25-30)
- The Integumentary System in Animals — Merck Veterinary Manual
- Structure of the Skin in Dogs — Merck Veterinary Manual(飼い主向け)
- Hypothyroidism in Animals — Merck Veterinary Manual
- Dog Shedding: When Dogs Shed Most and How to Manage It — American Kennel Club
- What Is a Double Coat, and What Dog Breeds Are Double-Coated? — American Kennel Club
- How Should You Groom a Double-Coated Dog? — American Kennel Club
- How to Groom a Standard Poodle — American Kennel Club
- Grooming and Coat Care for Your Dog — VCA Animal Hospitals
- Choose the best brush for your pet — VCA Animal Hospitals
- Excessive Shedding in Dogs — PetMD(獣医師レビュー: Barri J. Morrison, DVM)
- 犬種別犬籍登録頭数 — 一般社団法人ジャパンケネルクラブ
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SiPPO Friends 編集部
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